「空の魚」
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WonderWord優秀賞
モノコン予選通過作(個人)
「愛なき世界で君の手を」
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「忙しい朝に、一言の愛を。」
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「火刑台で竜に捧げる歌」
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「行動原理」9月オススメ掲載
https://monogatary.com/story/252549
「俺の兄貴に(以下略)」
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Twitter/SPOON/pixiv/カクヨム/魔法のiらんど @tsubameamano
朗読配信&作詞作曲
挿絵大歓迎!
アイコン 凡様
一つ下の弟の国立大学入学式の日、専門学校二年生の双子の妹が大企業の内定を取った。音楽大学を目指す私は二浪目に突入した。 音大受験対策予備校の先生が変わった。新しい先生に酷いことを言われた。「君は今まで見てきた生徒の中で一番才能が無い。時間とお金の無駄だからやめてしまえ」 発破をかけるためにあえてキツイことを言う方針の先生だから仕方ないのかもしれないけれど、女手一つで働く母に負担をかけている私には包丁よりも深く刺さった。 辛いけれど、弟と妹のお祝いの食卓では無理矢理笑顔を作る。弟の好物のハンバーグと、妹の好物の唐揚げは母の手作りだ。二人はまともな人生を歩んでいるのに、私だけが置…続きを読む
冠婚葬祭でしか会わない友達なんてフレーズがあるけれど、まどかは年に1度の祭りやお正月はおろか成人式にすら帰って来なかった。まどかと会うのは19歳の秋以来5年ぶりだ。 私たちが所属していた科学部唯一の先輩だった佐藤先輩の結婚式の帰り道、先ほどまで祝いの場に同席していたとは思えないほど気まずい空気が流れる。まどかは私の1番の親友だったはずなのに、高校時代の色恋沙汰が尾を引いてうまく話せない。「佐藤先輩の奥さん綺麗だったね。変な意味じゃなくて」「そうだね」 まどかが何度か話題を振ってくれているけれど、私はまどかにどう接していいか分からない。 マンモス校では共通の知人はたくさんい…続きを読む
走馬灯はあまりにも単調で、10週打ち切りの漫画みたいに酷かった。 幼少期、英会話教室もピアノ教室もスイミングスクールもすぐに飽きて全部やめてしまった。小2で九九に躓いて以来、成績はずっと中の下と下の上を行ったり来たり。旅行好きな両親だったので海外にも連れて行ってもらったけれど、歴史的背景なんて分からないので「なんか綺麗だな」以上の感想は抱けない。 中学の部活はバレーボール部だったけど、紅白戦をやるには人数が足りないほどの弱小チームだった。緩い部活なのでただでさえ少なかった筋トレや走り込みのメニューはサボってばかりだった。 親友の桃花は漫画を何百冊も持っていていつも貸してくれてい…続きを読む
僅かみそひともじの言葉の交わし合いに比べれば、言文一致体での手紙の往復の何と自由度の高いことであろうか。我々大和民族は古来より和歌を送り合って顔も声も知らぬ相手に恋慕の情を抱いてきたのだから、一度とて会ったことのない文通相手に恋をする男女がいたところでおかしくはなかろう。 尤も、このような文化は上流階級のものであり、多くの小作人には縁のない話である。したがって、今から語る恋物語の主人公は男女どちらも代々裕福な家庭に生まれ育った謂わば世間知らずなお坊ちゃんお嬢さんである。 西洋では5W1Hと言う物に則って物語の粗筋を明確にするのが一般的であるが、読者諸君の多くは私や「彼ら」と同じ日本人…続きを読む
設定変幻自在のデジタル時計限定ガチャならリセマラUR確定だけどタイムマシン未実装のリアル運営大人の前では無力だ 鬱屈なLow teen荒野と砂漠を往復 憂鬱なRoutine規則違反のチョコレート半分コ せめてものレジスタンス砕けた希望は散るだけ 混迷のHigh teenふざけた神様が決めた 運命とFightin’月が欠けるたび広がる君という世界とのディスタンス僕の愛しい世界が 泣いたのは偽り強(し)いた この星の せいなのかなら起こし方教えてHypernova(ハイパーノヴァ)理(ことわり)全部 僕の手で 作り変えたら笑ってよ…続きを読む
幽霊になったって愛してる飛行機雲よりまっすぐなそのまなざしが魂を熱情で染めたんだだから君は変わらないで アークトゥルスのままでいて騒がしい月曜日の夜 幽霊になった取り戻せないまま流れる 記憶のスライドショー手作りネコちゃん型クッキー公園で口ずさんだ唄ルルリリ ルルララ レレルルラー百年分のぬくもりをもうもらっていたんだ幽霊になったって愛してるどうか悲しみの首枷(くびかせ)のカギを外して後悔はもうないよ ありがとう今夜君が桜色の夢を見られますように…続きを読む
君が泣いていた。私だけは君を理解してあげられると思っていた。 恋も青春も可愛い子の特権で、そんな毎日に鬱屈していた。教室に居場所のない私たちにとって屋上は聖域だった。 あの日の詳しいことはもう覚えていない。確か、クラスのグループチャットにどちらかの悪口が書かれたような気がする。内容はもう忘れたけれど、メグの涙だけは覚えている。「汚いものなんてもう見たくない」 私より少し大人に見えたメグが教えてくれたおまじない。二人で手を繋いで高い所に上る。そして、目をつぶって『闇夜の唄』を歌い続ければ、いつか「音だけの世界」に行けるらしい。メグはその儀式の相方に私を選んだ。二人だけの秘密の…続きを読む
クソったれな世界に産み落とされた。世界には俺以外誰もいない。実体のある生命はとうの昔に滅びた。 何もないこの地に、見えないけれども漂っている連中。体を持たない癖に欲望だけはいっちょまえにある精霊どもを便宜上スピザイアと名付けた。 スピザイアは実体を持たない。融合と分裂そしてそれらに伴う変異を繰り返して繫栄してきた。奴らは不死身だ。しかし、融合・分裂後の個体は果たして同じものと言えるのかなどは気にも留めず、本能のままにその生命の形を変える。それらの行為は快楽を伴うらしい。 快楽に溺れ、好き勝手に生きるケダモノのくせに崇高ぶったスピザイアは皆、信仰心を持っていた。 神とは、大衆の…続きを読む
俺には恩師と言うべき存在が1人いる。特に何かしてもらったというわけではないが、彼の言葉は俺が生きる上で大きなヒントになっている。 そもそも俺が引きこもったきっかけは一昨年行われた小学校の同窓会だ。そこで色々トラブルがあったのだが、それはこの際どうでもいい。同窓会翌日、直前まで一緒にオールで盃を交わしていた担任が惨殺死体で発見された。出席者は全員警察で事情聴取を受けた。当然俺は犯人ではないし、当時のクラスメイトにそんな度胸があるやつがいたとは思えない。しかし、この件については完全に無実とはいえ、警察の事情聴取は脛に傷を持つ俺にはストレスフルな出来事だった。 担任、織田先生は生徒からも保…続きを読む
何を食べても味がしなくて、何を見ても綺麗だと思えない。シロという半身を失った私の人生は無味乾燥なものとなった。 精神科に通ったところで、生まれた時からずっと一緒だったシロを失った悲しみが癒えるとは到底思えなかった。私の痛みをペットロス症候群の一言で表す大人たちに憤りを感じた。 総合病院に来るのは何年ぶりだろう。あれは車からシロを庇って大怪我をした時だった。足と顔には未だに傷が残っているが、隠そうと思ったことは1度もない。シロを守った証を誇らしく思っている。制服のスカートを冬でもわざと短くして傷を見せびらかした。 小学生の頃だったとはいえあの時の私は非常識極まりなかった。看護師さん…続きを読む