この村には古くより伝わる言葉があった…人の体は人と名のつく魂により動かされるが、その魂の核に鬼がおる。鬼とはなんぞや。それは本当の心じゃ。傷つけることも、傷つくことも、人がするのではない。鬼がするのじゃ。その鬼は魂の籠によって閉じ込められているが、開ける鍵は本当の心であることを忘れるなかれ。まだひぐらしの声が微かに響く頃。青空の下で俺は小豆ちゃんと二人っきりで最期の遊びに興じていた。遊びのタイトルは「鬼ごっこ」鬼はもちろん、小豆ちゃんだった。「鬼さんこちら、手の鳴る方へ」俺はリズムに合わせて手拍子をしながら幼馴染の小豆ちゃんを挑発する。小豆ちゃんは必死で俺を捕まえようと…続きを読む
日本は古くは芦原中津国と呼ばれていた。始まりは陰と陽を大鍋に放り込み、神がかき混ぜ、混沌を作った。始まりの神はそこから滴を絞り出し、大地を作った。 そして、時代は神代から人代に移りかわろうとしている。この時、大地は大きく六つの国に分かれていた。邪馬大国、日向国、出雲国、吉備国、尾張国、越国。そこにはそれぞれの文化があった。人から神の加護を受けながら羽ばたこうとしているその時、時代の大きなうねりが時代を覆っていた。人代は初代天皇「神武」から始まる。物語はまだ神武の時代ではない。その少し手前の話になる。神武はまだ磐余と呼ばれていた。そしてこの物語の主役は彼ではない。これは彼の…続きを読む
わたしのことは葉度と呼んでもらってもらっても瑠璃と呼んでもらっても構いません。友人は瑠璃ちゃんと呼ぶし、SNSでの名前はランジェリーという名で、このYouTubeも InstaもTwitterもやっています。まあ、今日は初めてのYouTube投稿ということでわたしの自己紹介から始めたいと思います。あっ、挨拶もすでに感がていまます。「全て、の悩みは、ノンノノン、ランジェリーチャンネル。君の謎、頂きました」これがこのYouTubeでの挨拶です。いつか前までわたしは救急医療センターの看護師として働いていました。そこは暦の無い世界なんです。毎日が日常のルーティンワーク。忙しい時は、例えば…続きを読む
東京に引っ越してから、すでに6年が経っていた。映像製作会社に内定が決まった時、僕は本所吾妻橋という、知る人しか知らない場所に住むことを決めた。そこは浅草線しか通っていない下町の中の寂しい町だった。まだ、東京のシンボルが東京タワーだった時に、僕は浅草から歩いて15分の場所を新たな生活の拠点にした。理由はたった一つ。僕は大学時代、芸人を志していた。みんなが就職活動を始めた時に僕はシアターDという小さな小屋で月に1回ネタを披露していた。…続きを読む
みなさんこんにちは。これはある刑事が価値観を変えさせられる物語なのであります。正義とは何か悪とは何かそんなことはどうでも良いのであります。彼は昔、何度も万引きをしました。なぜ、そんなことをしたのか。金が無かった訳では無かったのです。それでも彼は万引きをしました。たいして欲しくないものをたくさん万引きしました。欲しくないのに盗む。彼は生きることを舐めていたのです。彼は心のどこかで捕まりたいと考えていました。もう、生きることに飽きていたのです。疲れていたのです。盗む物は全てメルカリなんかで売らずにいました。別に金に困っていた訳でも無かったので、自分が罪を犯していることを自身で認…続きを読む
刑事の仕事ってなんだと思う?真実を求めること?被害者を救うこと?犯人を捕まえること?そんなものはどっかの物語の名探偵に任せればいい。基本は何が起こったのかを整理すること。被害者を慰めること。そして聞き込み。そして何より大切なのは、犯人を捕まえたあと。犯人に二度と罪を犯させないように話を聞き、そして、犯人が正しい道を再び歩めるように、責任を持つこと。そしてその人が二度と犯罪を犯さないことを信じてあげることだ。人は過ちを犯す。でも、その理由は様々だ。俺と出会い、話をし、また罪を犯しそうになった時に、チラりとでも俺の顔がよぎり、この人のために罪を犯すのをやめようと思ってもらえたら何よりも…続きを読む
疲れた時にどこに行くかで、人の生き様がわかる。愛する人のもと?海?家でネットフリックス?友人のもと?僕は何故か公園に行く。多摩川沿い、家の近くの神社の裏にある公園は、昼は大人になりたい子供たちの遊び場。夜は大人になりきれない子供の遊び場になっている。草木に囲まれたその公園は僕にとって、現実から避難する場所になっていた。夢の国とも違う。現実と夢との狭間で僕は透明人間のように、公園にたむろする人々を見つめる。白いベンチ。そこが僕のベストプレイスだった。…続きを読む
この高校は腐っている。寛吉は校舎の屋上から生徒たちがはしゃいでいる姿を見下ろしながら思っていた。こいつらは、全員がどこかの会社の社長令嬢だったり、医者の息子だったり、弁護士の息子だったり…生まれた時から金というものがそこにはあった。あったどころか、有り余る金にまみれながら生きていた。彼らにとって金は空気のようなものだ。いつもそこにあり、欲しいときには際限なく懐に入れる。いや、懐に入れるという言い方自体が貧乏人の発想、表現方法だ。こいつらはカードを持っている。黒いカード。そこには無限に金が入るようになっている。この世に手に入らないものなど無いと思っているだろう。でも、それが誰の…続きを読む