家出をしようと思う。そう思ったのは、別に衝動的なものではない。よくドラマとかである、両親と喧嘩して~とか、彼氏に振られて~とか、そういうのではない。いや、確かに彼氏には振られたけど、それはもう半年も前のこと。家出には何の関係もないのである。昔から、漠然と考えていたのだ。自分は一体どこで生きているのだろうと。小さい頃、私の世界は狭かった。家という空間が、私のほぼすべてだった。たまに母親に連れられて行った公園を、まるで異次元のように感じたのを覚えている。でも、楽しかった。幼稚園に入ると、世界は少しだけ広がった。幼稚園という第2の家のような空間は、居心地の悪いものではなかっ…続きを読む
──チャッ ──タ──パイ! ──テクダサイ! ──ンパイ!「──先輩!」ハッ!自分に向けられたその声に、俺は目を覚ました。目の前に広がるのは見慣れた白い天井ではなく、ドラマとかでよく見る無機質なコンクリートのそれだった。声のした方に首を回すと、そこにはいつも学校で話す後輩の森島がいた。「先輩やっと起きてくれた!よかった……怪我とかしてませんか?」そう聞かれて、身体の感覚を研ぎ澄ませてみる。特に痛みはない。上体を起こして実際に自分の四肢を見るが、やはり外傷等は無いらしい。そこで気づいたが、俺はベッドに寝ていたらしい。目に入った情報から、何となく硬い床に寝そ…続きを読む