眠れない夜がある。それは別に特別何かがあった日、など一時の感情ではなくて、もっと深い私の心に根付いている感情のせいであることを私は知っている。眠ろうと必死に目を閉じるものの、やはり眠れず頭はどんどん冴えてゆく。仕方がないので起き上がり、ベットから出た。空を見れば夜がもうすぐ明ける頃合いだろうか。暗いけどほんの少し明るくて、私の心に優しく寄り添ってくれる。遠くを見れば、雲が薄く広がっている。まるで、はっきりしない私の心をそのまま写しているみたいだ。私は、はっきりと意見を出したりすることが苦手だった。学生時代、そのことでいろんな人に指摘を受けることが多くあった。は…続きを読む
花火の上がる大きな音が、辺りに響いている。 私は人の波の中から抜け出して、橋の上へとやってきた。橋の上には誰もいなかった。先程までの騒がしさが嘘のようにあたりは静まり返っている。花火の上がる音だけが静かに鳴り響いていた。 私は橋を乗り越え、水の中へと落ちていった。…続きを読む
むかしむかしあるところに、金髪の少女と黒髪の少年がいました。その2人はとても仲良しで、いつもお花畑で遊んでいました。ある日、少女はお花畑に来ませんでした。少年は待ちました。けれど、少女は次の日もその次の日も来ることはありませんでした。それでも少年はお花畑で少女を待ち続けました。気づけば、5年の月日が流れていました。…続きを読む
夜が、とてつもなく恐ろしい、と感じる時がある。いつもではない。でも、そう感じる夜は絶対に眠れない。 吹奏楽部で大きな大会があった。大切な、大切な大会で、3年生はこれで引退だった。結果は、銀賞だった。私も3年生の1人で、これまで一生懸命クラリネットを吹いてきた。大会が、こんなにもあっさりしたものだなんて、思いもしなかった。家に帰ったら、すぐに寝てしまおうと思った。 微かに頭が覚醒した感覚があった。ゆっくりと目を開ける。あたりは真っ暗で、もう夜になっていた。(…こわい。)また、恐怖を感じる夜になった。いつもなら絶対に眠れないはずなのに、今日は何故だか、眠ることができた。眠っている…続きを読む
ここは、どこだ…?* 今日も俺は、つまらない授業を聞いていた。窓の外を眺めながら、時間が過ぎるのを待つ。「こら!ちゃんと聞け」あ、怒られた。まぁ、ちゃんとしないけど。ここまでの流れで分かる通り、俺は真面目ではない。もちろん中学生になった当初から不真面目なわけではない。こんな感じになったのは、あんな病気になったせいだ。原因不明の謎の病気。激しい運動をすれば、目眩・頭痛を起こし、呼吸困難に陥ることもある。運が悪ければ、死ぬ。日光に長時間当たるのもダメ。水やお湯に触れ続けるのも厳しい。…そんな、意味のわからない病気になった。俺は今まで健康体で、風邪なんて数年に一回…続きを読む
あの人は、優しい人だった。誰よりも、誰よりも優しかった。私もそうなりたかった。でも、無理だった。私は、あの人のように上手く振る舞えなかった。中途半端にしかなれなかった。中途半端な優しさは、他人にとっても私にとっても苦しめる枷にしかならなかった。だけど、あの人は言った。優しくなければいけない、なんてことはない。生き方は十人十色だよ、と。それでも、私が優しくなりたいと言ったら、優しくなりたいと願う君は、今、きっと誰よりも優しいよ。そう、言ってくれた。中途半端な優しさは傷つけてしまうかもしれない。ただの自己満足かもしれない。でも、それら全…続きを読む
ザーッ窓に、激しい雨が打ちつけている。あたりは暗く寝静まっているのに、雨の音だけがうるさい。これじゃ眠れないじゃないか。 私…天乃優は、雨が嫌いだ。癖毛の髪の毛は広がるし、気分も重くなる。特に、夜に雨が降っているときは、なんだか寂しくなって嫌だった。 浅い眠りを繰り返して、やっぱり起きてしまう。ほらね、眠れない。眠れなくて寂しい夜は、たくさんの人形を抱きしめて寝ていたけれど、中学生になってからは、その人形たちを見ていない。多分、捨てられてしまった。もう一度会いたいな。私の寂しさはとどまることを知らずに、広がり続けた。* 次に意識が覚醒した時、私は宙に浮いていた…続きを読む
この世界には、光と影の国がある。 光の国は、それは平和な国で、国中に笑顔が溢れていて、全員が幸せになれる国として有名だった。 逆に、影の国は、内戦が起こりやすく、とにかく治安が悪かったため、恐ろしい国として有名だった。 光の国は、〝たいよう”という、光が差していた。その光のおかげで、食物がよく育ち、過ごしやすい環境下にあった。 影の国には、“たいよう”の光は差さなかった。いつも、あたりは薄暗く、食物も育ちにくいので、餓死する人も少なくなかった。 だから、戦争が起こった。 影の国が攻撃をしたのをきっかけに、大戦が幕開けした。そして、その戦いは、およそ500年も続くこととな…続きを読む
心が動かない。 そう気づいたのは、ずいぶん昔に上映されていた、ものすごく感動する映画を観た時だ。まぁ、まだ幼かった当時の俺には理解できなかったってだけかもしれないけど。ただ、今見返してみてもやっぱり何も思わないから、心は動いてないんだと思う。 というか、まず心が動くってなんなのかよくわからない。むしろ誰かに教えてほしい。物理的に動くの?いや、それは死ぬ。やっぱり感情が大きく動くってことなんだろうなぁ。 でも、17年生きてきて今んとこ感情が大きく動いたことって、ない。から、やっぱり俺は心が動かないんだなぁ、なんて呑気に思ってる。 じいちゃんは、好きな子の1人でもできれば変わる、なんて言…続きを読む
目覚まし時計が鳴っている。布団から手を伸ばして、止める。また、今日が始まった。 もう少し寝ていたいな…と思いながらもモゾモゾと布団を抜け出す。ひんやりした空気が僕を包み、部屋を物寂しく感じさせた。 朝ごはんを食べて、服を着替える。時刻は7時。普段ならこれから出社するところだけれど、最近は出社しない。これが、今の日常だから。 パソコンを持ってデスクに向かう。仕事をこなして、気づいたら、お昼。ご飯を食べて、また仕事。仕事を終えて、眠って、また目覚める。そんな毎日の繰り返し。 こんな日常になってから、夢を見るようになった。あの頃に、戻ったみたいな夢。窓から差し込む太陽の光に、優しく…続きを読む