【白歴史】・【黒歴史】の対義語。・自分の過去を振り返った時に思わず微笑みがこぼれ落ちてしまうような経験や栄光。・未来に起こったらいいなぁと妄想する希望的観測。[例文]1、兄弟の中で唯一義理ではないチョコレートを持って帰った中三のバレンタインデーは僕の白歴史だ。2、特別な努力はしていないが奇跡的にオーディションをクリアし韓流アイドルに!二年後の夏に始まる私の白歴史。…続きを読む
二つ年上の彼女に合わせ背伸びデートした代官山、一足早く社会人になった彼女に対するつまらない嫉妬から喧嘩になり別れた。帰り道ふらっと立ち寄った目立たないドライフラワーショップ。ドライフラワーショップなのに「洗時屋」なんて変わった名前の店だった。 ドライフラワーはおろか花なんてものに全く興味は無く、特に目立った商品が並んでいたわけでもないのに何かに招かれるように店に吸い込まれた。 シンプルで控えめな装飾と嫌みの無いアロマの香りが慣れない大人の街で疲れた僕を癒してくれた。僕は大きな置き時計の前に無造作に置かれている見た事の無い花に心奪われた。店内に並ぶほとんどの商品が見た事の無いものだった…続きを読む
今の日本に本当の「戦争」を知っている人間はどのくらいいるのだろう?私を含めて今生きている日本人の大多数は「戦後」生まれ。平和な国の平和な時代に産まれ育ち「戦争」は五年、十年毎の節目の年や終戦の日の各地の祭典のニュース。教科書の中の遠い昔の出来事として頭の中だけの理解しか出来ていない。最近、そんな私も原爆が投下された後の話を学んだ時かニュースで戦争体験者の話を聞いて覚えたのか定かではないが、当時「広島」や「長崎」には今後数十年草木は生えないだろうという話があった事を思い出していた。この季節になると鬱陶しい程に伸びる草だが、どんな環境でも根を張る「強さ」、踏まれても抜かれても再び復活す…続きを読む
桜が咲いたと思ったら春はジェットコースターのように駆け抜けて行き、可愛らしい新入生の足音と共に夏の足音も聞こえてきそうな四月上旬。魔法でもかけられたように勢いを増す雑草を抜きながら私は真っ青な空を見上げて少し昔の事と母の事を考えた。******生まれも育ちも関東の田舎町、子どもの頃には歩いていける範囲にコンビニなんてなくて。家の周りには畑とたぬきと竹林。春が来ると父と母が草刈り機を操り、兄と私と弟が刈られたそれを集めて山にする。色々あった両親だったけど、気難しかった父が定年を迎え少し歳の離れた元気な母と旅行なんかに行き始めるようになってすぐに亡くなった。独りになった…続きを読む
オンライン上の関係から現実世界の関係に…。何かしら意図的な何かを感じながらも「はじめての」オフ会の夜を思い出し、今も俺はワクワクしている。引き篭もってコンクリートのように固まっていた心と表情筋。時間が経ってもあのナポリタンと咲希の不適な言動を思い出す度に自然と上がる口角が俺の昂る気持ちを表している。石川恵美…。彼女の失踪で忘れた笑い方を咲希が思い出させてくれた。*今分かっていること。1、咲希は「ハーレークイーン」を語る偽者2、あのコジャレた居酒屋に限定10食のナポリタンというメニューは存在しない3、あのポニーテールの店員は「石川恵美」の親友で…続きを読む
日本にはこんな言葉がある。「名は体を表す」 素晴らしい言葉だとは思うけど今の私にとっては呪いをかける魔法の言葉と等しい。 いわゆる「キラキラネーム」全盛の時代に産まれた私も両親の想いの込められた美しい名前?になっている。私は白華。雪原白華。「ユキハラシロハ」雪原に凛と咲く白い華という意味で「シロハ」と名付けられた。 自分の名前が大好きだった。あの出来事が起こる前までは。人より白い肌も少し控えめでおとなしい性格も誰に指摘されるわけでもなく、私という人格を皆に尊重されて幸せだった。 両親の離婚を機に雪の降る温かい地元を離れるまでは。…続きを読む
絵が描けない。歌が歌えない。楽器が奏でられない。デジタル社会に疎い。手先が不器用。 私という人間はそんな人間だ。時々病んでしまうほどに妄想が過ぎる。無性にあらゆる事象が解きほどきたくなる。ひねくれた空想に一人笑い、一人興奮し、一人落ち込んで涙する事がある。 私という人間はそこそこ気持ち悪くて鬱陶しい人間だ。何事もそつなくこなすが優れた力は持っていない。人並みに、目立たないように生きる。協調性を言い訳に自己主張から逃げる。 私という人間はその他大勢に紛れ込む臆病で卑怯な人間だった。特筆するような何かを持たないつまらない人間。主人公にもなれない、なろうともし…続きを読む
彼と二人、浅草ビューホテルの高層階にあるレストランで雷門とスカイツリーを眺めながらお洒落なディナーを楽しむ土曜日。 銀座のギリシャ料理店で親友とちょっぴり大人ランチする日曜日。 東京にはお洒落で美味しいハイセンスなお店が沢山ある。それなのに…。*******「食べ歩き」この世の女子のほとんどが大好きな魅惑の言葉。大学進学を機に上京して一年、実家を離れて自由になり暇を見つけては東京メトロに乗って東京中のお洒落なお店を探し回っていた。 他人よりも裕福な家庭で育ったが厳格な両親に監視されるような毎日。聴かせてもらえた音楽はクラシックだけ、口にする物も健康に気を遣った物ばかり。誰で…続きを読む
首都「東京」。見渡す限り360度、空を遮るようなビルが立ち並んでいる。 毎日毎日暗い地下に入り丸の内線という鉄の箱に揺られ新宿のオフィス街に通う僕は、どこを向いても無機質なこの「東京」に息苦しさを感じている。 そんな僕の息苦しい毎日に変化が起きた。このご時世で勤め先にもリモートワークが定着し始めた。 出社は月に二回。鉄の箱に揺られる回数も減り家族と過ごす時間が増えた僕は、妻と本気で地方への移住について話し合うようになっていた。 僕はもっと静かな隣県に移住し車を買い暗い地下に降りて鉄の箱に揺られる生活に完全に別れを告げたかった。しかし妻はなんだかんだ便利な今の都会暮らしを手放せない…続きを読む
僕は浪人生。地元の進学校で成績が良く、担任に勧められるまま軽い気持ちで、「名のある大学を」という浅はかな理由で早稲田大学を受験した。 慢心から大した準備も勉強もせずに臨んだ結果が今の肩書きに表れている。だけど今年こそ…。******* 彼女と出会ったのは昨年のオープンキャンパス。お互いに一人で見学に来ていた僕達は昼食でたまたま隣の席に座った。 大きな眼鏡をかけて控えめな様子でひとり不安そうに手作りの小さなお弁当を食べる彼女。突然で警戒されるかもと思いながらも同じくひとりで心細かった僕は思い切って声を掛けた。「ひとりで来たんですか?」「はい。あなたも?」 別にナンパ目…続きを読む