多分にネタバレを含むため、まず作品を読んでからこの読書感想文をお読み頂けたらと思います。主人公の気持ちや、主人公の今後について皆様がどのような解釈をされたのか、是非お聞きできたら嬉しいです。—————————————————————この物語は、1組のカップルの『出会い』と『別れ』を切り取った、一章で完結する短編ストーリーだ。しかし、その描写は情景を読者に思い描かせるのに充分で、繊細に描かれた主人公の気持ちがグサグサと胸に刺さる作品になっている。そう、私はこの物語を読んでる間、ずっと心が痛かった。そして、気付いた。私は、まるで自分が圭佑に別れを切り出しているような気持ちになりながら、この物…続きを読む
「こんなこと聞いていいのか分かんないんだけど…結婚式のキャンセル料とかって大丈夫だったの?」ユウキが心配そうに聞いた。「あ、うん!式場の人が旦那の知り合いで、なんか上手くやってくれたみたい。」こんな時でもミホは明るい。「そっかそっか、それは良かった。今年結婚するつもりだった人たちは、みんな大変だよな。でも、こんな時だからこそ、幸せなニュースが欲しいよな。」「ほんとだよな。ブラック企業で勤める俺は、彼女もいねぇし、ほんと良いことねぇわ。」「お前だけじゃないぜ?俺も彼女いねぇし。しかも、こないだびっくりすることが起こってさ。」サトシとアユミが黙り込んでしまったので、ユウキが…続きを読む
誰しもが少なからず、伝えられないまま終わりを告げた恋があったのではないだろうか。それは私も例外ではない。自分自身の話をしてしまえば、数年後に再会した時にその想いを伝えてしまったのだけれど、その瞬間に、片思いしていた時間が色褪せてしまったような、チープなものになってしまったような気がした。何が言いたいのかと言えば、心にしまった恋心ほど美しいものは無いということだ。読み手の私たちの季節が少し涼しくなってきたことも相まって、私は2人が予備校終わりの寒空の中、寒くなってきたね、なんて話しながら、主人公の女の子は2人の距離にもどかしさを感じながら、着かず離れずの距離を歩く2人…続きを読む
校庭、テニスコート、川、橋、住宅、トンネル私は景色を追い抜いていく。青々とした緑が、目に眩しい。2人がけの座席の窓際に肘をついて、外を眺める。「呼び出しといて、ずっと黙ってんなよ。」哲平は、隣の椅子に浅く座り私の横顔を見てため息をつく。「雨でも降ってれば、感傷的な気持ちに浸れるのに。」絞り出した言葉が少し震えるのは、電車の揺れのせいだ。「天気はお前の気持ちまで汲み取ってくれねーよ。」「心の中では分かってたんだ。先輩に二股かけられてるってこと。」「ふぅん。」「それでも、心の中で何度も何度も打ち消して、考えないようにしてたんだ。」「そっか。」「でも…続きを読む
電車の中で思わずにやける。いるいる、こんなヤツ。もうまず、章タイトルで持っていかれる。最高のネーミングセンスである。そしてまるで、図鑑を読み上げるように、マウントウーマンの特徴を淡々と読み上げていく。そこが面白い。無感情であるが故に、真の面白さが伝わる。それであって、言葉のリズムがとても良い。「あっ! やせいの マウントウーマンが とびだしてきた!」と頭の中に軽快な音楽が流れ出してくる。どんな面白いマウントウーマンがいるのかは、手に取って確かめてほしい。———私は“だけ代さん”とハンガーガーを食べに行って参りますので、どうぞ、ごゆっくりお楽しみください。…続きを読む
長編が苦手だ、という人も読んで欲しい。全ての章にに驚きがある。どんでん返しにどんでん返し。13章からなる物語だが、ページをめくる手が止まらなかった。皆さんもご覧になったであろう題材のショートムービーには、たくさんの“怪しい”仕掛けが散りばめられていた。その仕掛けを回収する手腕に、なるほどと深く頷いた。とても自然に、一連のストーリーの中に仕掛けがピッタリとはまっていく。そして、登場人物達にも一人一人しっかりとキャラクターがあり、語る言葉に重みがある。人を愛し、想う気持ちそれはとても、重い、想いさぁ、物語を読んで、想像してください。誰が誰を想う?最…続きを読む
「この世界はね、幸せと不幸で出来ているの。幸せと不幸が、うまくバランスを取っていないと、この世界は崩れてしまうから、誰かが幸せになったら、誰かが不幸になって、誰かが不幸になったら、誰かが幸せになるんだよ。私たちは、産まれた瞬間から、不幸のババ抜きに強制的に参加させられているんだと思うの。」君の口から、何度この台詞を聞いただろう。そしてこの後、こう続けるんだ。「私はババ。私をひくと、不幸になるよ。」————————————隣の席の馬場さんは、ほとんど話さない。とても大人しい女の子だ。ただ大人しいだけではない。この世で起こる全ての不幸を、自分が起こしているとでも言…続きを読む
▪︎みずき(私)…マウント取ってくるやつに、いちいちイライラする事に疲れたから、何も考えず「それな」って言うことにした。20代独身、彼氏なし。▪︎るり…私が部署異動をしたら、一緒に働くことになった同期。子持ちの時短勤務。▪︎あや…会社のテニスサークル仲間。ふわふわ系小動物系女子。…続きを読む
変わらない私たちは、変われない私たちは、いつの間にかこんなにも変わり果ててしまった。きっとこの日が、最後の分岐点だった。クローバーの花言葉は、「幸運」とゆうイメージが強いけれど、「復讐」とゆう意味をも持つ。特に、5つ葉のクローバーは、縁起が悪いと言われているそうだ。私達の中で、誰か一人でも欠けていたら、何かが変わったのだろうか。…続きを読む
瞑った瞼の向こう側に、明るい光を感じる。最近は、日の昇りが早くて困る。本当に起きたい時間よりも、必ず早くに目が覚めてしまう。目覚めるまえ、私は夢を見ていた。偶然、あなたとすれ違って、目があって。だけど、あなたは新しい人と歩いていて、横目で私を見て、そのまま通り過ぎる。あれ、そんな夢だっけ?今さっきまで覚えていたはずなのに。「起きなきゃ…」大きく息を吸って、やたらうるさい心臓の音を沈めた。————————————「東京に異動になった。」当時の彼氏と、2年記念日を迎えたすぐ後だったと思う。唐突だった。私が社会人1年目の時だった。『それでも…続きを読む