私は下界への駅で佇むことが好きだ。 天使は神様になり、下界へ降りていく時、この駅の電車に乗って天使の街を去っていく。 すると電車が通ったあとは、餞別の華が咲き、心が洗われるくらい美しいのだ。 私は神様になる気はさらさら無いので、この天使の街で毎日生活している。 神様になるには勉強をし、試験を受けて、合格しなければならない。 そんな大変なことまでして私は神様になんてなりたくない。 それに神様になると天使だった時の記憶が無くなるという話だ。 理由は良く知らないけども、どうやら思い出して、恋しくなって、勝手に帰らないようにということらしい。 まあどうでもいいけどね、と、そんな話を聞…続きを読む
夜のラベンダー畑。 ラベンダーの周りを飛んでいるミツバチを見ると懐かしく思う。 僕だったから。 まさしく僕だったから。 僕の前世はミツバチだった。 しかしその生涯は無念のまま散ることになった。 何故なら僕たちの巣はカラスに襲われて、無残な姿になったから。 一生懸命集めた蜜を守ろうと闘ったミツバチは、僕は勿論皆死んで、きっと蜜はカラスに奪われたに違いない。 だからカラスが憎いのだ。 カラスを倒したい、そう思っていたら僕は人間に転生した。 だから今、このラベンダー畑にやって来て、カラスの巣がある、あの木の下までやって来ていた。 さぁ、この右手に持てる尖った石で、カラスの巣を…続きを読む
コロナ禍によって、私の一人旅は県内ばかりになった。 だけどもこうやって県内を細かく旅することもそんな悪くないな、と思いながら出雲崎の良寛堂を拝見し終えた。「まだ時間あるな」 ついポツリと口から出た。 一人旅をしていると、つい独り言を言ってしまう。 そうやって自分の脳内と会話しているような気分で。 すると後ろから誰か、女性の声がした。「午後1時ですもんね」 私がバッと振り返ると、そこには私よりも幼いような、背の低い女性が立っていた。「聞こえましたか……」 と、おそるおそる聞いてみると、「はい、ずっと喋ってらっしゃいましたよね」 と言われて顔が火照ってきた。 私は俯いて…続きを読む
最初の3,4回は私と同じ、高校生だと思っていた。 でもあんまり見たことの無いジャージで、調べてみると中学生ということが分かった。 苗字は林原、ジャージの胸に刺繍されているので多分間違いないだろう。 そんな彼のことが気になって、もう2ヶ月くらい経っている。 私がバイトしているバッティングセンターへ毎週月金土日に来る。 挨拶くらいしようと「こんにちは」と言っても、俯きがちに「ウス」としか言わない無口な子。 そんな彼の快音に、胸の高鳴りが止まらない。 汗はかいているのに涼しい顔で、バットを振り続ける彼のことが私は好きだ。 彼は練習を終えると、必ず自販機の前で立ち止まる。 缶ジュー…続きを読む
「すみません」 俯きがちの女性が私の花屋へやって来た。 この場合は大体そうだ。「能力を下さい」 ”合言葉”を言われた私は静かに店の奥へ誘導した。 そこで私は彼女の話を聞くことにした。「彼氏に浮気をされてしまって、結婚も誓い合った仲だったんですけどね……」 この仕事をしているとありがちな話だが、この話を私はありがちのまま終える気はさらさら無い。 私は落ち着いた声でこう言う。「それでは詳しく聞かせて下さい」「はい……」 悲壮感に溢れた彼女は淡々と喋り出した。 聞いた話を私は脳内で要約する。 仕事から帰って来たと言う彼氏の服から藤の花びらが落ちた。 問いただすと、浮気相手…続きを読む
和風グラタンなので、マカロニは使いません。和風なんで。まず、あく抜き不要のコンニャク(つきこん)を炒めて、水分を飛ばします。そこに醤油で下味をつけて、耐熱皿に入れておきます。これがマカロニの代わりです。カットした長ネギ1本を透き通る感じになるまでサラダ油で炒めて、小麦粉大匙1を入れて混ぜ、全体に馴染んだら、牛乳200ccを少しずつ加えて、ダマにならないように混ぜていきます。ここは、マジで少しずつ加えて下さい。ちょっと面倒くらいがちょうどいいです。ホワイトソースを作る時は面倒であればあるほどいいので。牛乳を入れきったら、市販のうどんスープの素を入れます。別に和風の味…続きを読む
「今年はもうジェンダー平等ということで、修司と和也もチョコレート買ってきて。バレンタインはチョコレート交換会にするから」 その紗栄子の言葉に拍手をした由芽、釣られて和也も手を叩いた。 俺はその言葉にただただ呆然としてしまった。 開いた口が塞がらない。 口の中にちょっとした埃が入っても致し方無いといった感じだった。 そんな、そんな……俺! やっとバレンタインにチョコレートをもらえると思っていたのに!・・【二月十日】・ いや知っている。 結果的に、もらえる。 でもそれは交換という形で。 しかしながら違うんだよ、交換じゃ違うんだよ、もっと一方的にさ、一方的にチョコレートが…続きを読む
中学二年生の春休みは何もすることが無いなぁ いっそのこと桃太郎のような忙しさであれば良かったのに。 桃太郎ってカッコイイよね、イヌ・サル・キジというどんなに頑張っても恋に発展しないメンバーでやってのけたんだもん。 俺だったら絶対美女をメンバーに入れて、その美女にカッコイイところ見せたくて頑張るみたいなことしちゃうなぁ。 ここは俺に任せろ! とか言って、それでまあ怪我したら「手当てしちくりー!」とか言って甘えたりして。 でも桃太郎はそんなこと一切無いから、イヌ・サル・キジと毎夜毎夜サンキューを言い合ってオヤスミだもんなぁ。 絶対毎夜毎夜サンキューは言い合っただろうけども、そうい…続きを読む
創作:0%肥満:0%「ダイエット成功したし、この勢いで物語も作ってしまおう!」創作:8%肥満:10%「プロット完成間近! ご褒美にケーキを食べよう!」創作:8%肥満:15%「何も浮かばないストレスで、ちまちま食べてしまった」創作:9%肥満:18%「夜中まで頑張ろうとコーヒーいっぱい飲んだからお腹がタポタポだぁ」創作:10%肥満:25%「プロット完成! 祝杯のビールが美味い!」創作:30%肥満:15%「めちゃくちゃ頑張ったら変な痩せ方した! 嬉しいけども大丈夫かなっ?」創作:35%肥満:20%「あまりにも変な痩せ方で心配だから、今日は多めに食べ…続きを読む
あーぁ、来年にはもう就職活動をしているのかなぁ、そんな自分が想像できないなぁ。スーツ買わないとなぁ、スーツ。スーツ着るのはいいよね、カッコイイよね。スーツで言った駄洒落はもうスーツのカテゴリーに入るから駄洒落よりもカッコイイモノ、スツ語になるよね。俺もスツ語を使いこなしたいな、スツ語の達人、略してスタツになりたいよ。スタツのスタッツすごいとか言われたい、スタツのアタッキングサードでの動き出しすごいって言われたい。だから今はとにかくスーツが着たい、いやまず欲しい。でも家から出ることは面倒だなぁ、スーツ売りの商人が家へやって来ないかなぁ。いやもうタダで欲しいんだけどもね、スーツを…続きを読む