君と出会ったのは小学生の時だった。入学式の次の日の給食で、牛乳瓶を割って、その時教室掃除だった私まで巻き込まれた。それまで、大人しくて言葉遣いも丁寧ないい子だと言われ続けてきた私が、生まれて初めて弟以外の人に「馬鹿なの!?やめてよ!迷惑!」と怒鳴った。君は泣かずに反論してきて、取っ組み合いになって、二人一緒に先生に叱られた。中学年になって、転校生がやってきた。その頃から恋愛の話が教室で飛び交うようになった。1組のあの子がかっこいいだとか、5年生の先輩が優しいだとか。でも、一番モテたのは君だった。「またラブレター貰っちゃった」毎度毎度、とても嬉しそうに私にそれを見せつけてきた。私にはそ…続きを読む
【Now】日常が不満なわけじゃない。充分に満足で、不充分につまらないけれど、悪いと思ったことはなかった。新しいことを人間は好む。目覚まし時計の音がした。外はまだ暗い。窓を開けて夜明けを待つ。暫くして、黄金に輝く光が部屋の中に入ってくる。「……おはよう」布団からモゾモゾと這い出た彼が言った。私はそれに短く返す。「おはよ」私たちは新しいものが大好きだ。だから、この一言が大切になる。新しいことの始まり……それが込められた大切な言葉…………それを、彼は教えてくれた。______これは、彼と私のあまりにありふれた、思い出のお話。…続きを読む
昔から『悪ガキ』だと言われ続けてきた。確かに悪戯は絶えなかったし、お淑やかにするのは大の苦手だ。今だって、色々な人の顔色を伺わなければならない学校生活に嫌悪感を抱いていないわけではない。親にだって迷惑を掛けてきた方だと思う。でも、そんな風に生きてきてしまったのは……私のせいじゃない……私だけのせいじゃない。彼がいたからだと……そう思いたい。「ねぇ、星を観に行きたいんだけど」幼馴染の夜月は空が好きだ。昔から時々、こんな風に突然、空を観に行くことを誘う。「そう…」いつもの通り、一緒に行かない?と夜月は言う。幼少期の私なら、真夜中の宙に胸を躍らせ、二つ返事で頷いていたことだろう。無邪…続きを読む