音楽系YouTuber「クール&パッション」が若者たちの間で大流行していた。青と赤をコンセプトにした二人組の音楽バンドだ。メンバーの一人は青い瞳をしたハーフで、端正な顔立ちから女子たちから絶望な人気を誇った。もう一人は髪の毛を真っ赤に染めた男で、情熱的な荒々しい言動によって多くの人々を魅力した。彼らはカリスマだったが、演奏面での弱さを兼ねてより指摘されていた。そこで彼らは更なる成長のためにテコ入れをすることにし、「逢魔」を新メンバーに加えた。彼はギターのスペシャリストで、黄昏時を思わせる黄色のピックがシンボルマークだった。こうして「クール&パッション」は唯一の弱点を…続きを読む
ホラーゲームを自作した友人から、プレイしてみてくれ、と頼まれた。数日後、友人からゲームの感想を聞かれた。「どうだったよ?」「ぞっとした」「どこが一番怖かった?」「Loading画面に映った自分の顔かな」(おわり)…続きを読む
KKO 金のないキモいおっさんの略で、社会的に異様に冷たくされている人々。年齢昭和59年生まれ 38歳学歴平成12年 ××高校 入学平成15年 ××高校 卒業平成15年 ××大学 入学平成17年 ××大学 中退職歴平成17年 ××コンビニエンスストア 勤務平成20年 ××食品工場 勤務平成27年 ××コンビニエンスストア 勤務資格自動車免許AT英検4級特技なし趣味なしそう書かれた履歴書が、アパートから飛び降りた男の部屋のテーブルの上におかれていた。男が目を覚ますとアパートの部屋の中にいた。人生に絶望して飛び降り自殺をしたはずの…続きを読む
だるまさんが転んだ、に変わる新しい遊びがちびっこたちの間で流行っていた。ゾンビさんが笑っただるまさんが転んだと同じで、鬼が数えている間にゾンビが鬼にタッチするという遊びだが、違う点はゾンビが笑ったら負けというところで、鬼はゾンビが迫りくる間変顔をする。この遊びは改良され、ゾンビは牛乳を口に含んで吹き出したら負け、となり、さらにリアリティを出すために牛乳ではなくトマトジュースに変え、負けたゾンビは死体として地面に倒れた。さらにはゾンビといえばショットガンなので鬼はショットガンの玩具を持つことにした。こうしてこの遊びを知らない通行人の通報によってパトカーが到着したことで…続きを読む
「大きなお年玉袋と小さなお年玉袋、どっちか一つ選べ」毎年正月にやってくる親戚のおじさんがそういった。おじさんが俺に見せたのは一つはフツーのお年玉袋だったが、もう一つはパンパンに膨れ上がってたA4サイズのお年玉袋だった。欲に目がくらんだ俺は「大きいの」と思わず口にした。俺の妹たちは意外にも小さなお年玉袋を選んだ。俺が期待に胸を膨らませてお年玉袋の中を確認すると1円玉や10円玉の小銭がギッシリ詰め込まれていた。一方、妹たちが選んだ小さなお年玉袋には1万円札が入っていた。あ然とする俺へ、「はっはっは! 欲をかくから損をする。世の中のセオリーだ。坊主、いい教訓になったな…続きを読む
今でこそマフィアはギャングと同じ意味合いになったが、昔は違った。支配者の圧政に苦しむシチリアの農民たちによって自警団が作られたのがマフィアの発祥だ。つまり、支配者から自分自身と家族や仲間を守る力を行使する者こそがマフィアであり、その暴力に対して周囲は見て見ぬ振りをしていた。当然裏切り者は許されない。沈黙の掟"オルメタ"の誕生だ。日本流にいうと、見ざる言わざる着飾るとなる。その日もマフィアが仕事をした。周囲は掟である見ざる言わざる着飾るを守りオシャレをしたが、一人だけグレーのスウェット上下だったため裏切り者として殺された。(おわり)…続きを読む
毎日が「凶の出ないおみくじデー」だった。男は凶の出ないおみくじで有名な神社のお守りを肌身離さず身につけており、それがために男の生活に凶事が降り注ぐことがない。大病もなく、事故もなく、大きなトラブルに巻き込まれることもない。不幸も不運もない。そんな毎日だった。しかし男は薄々気づいていた。凶の出ない毎日とは、言い換えれば、末吉しか出ない毎日のことだった。いいことも悪いとも何もない、単調な毎日。幸運といえば、せいぜいガリガリ君で当たりを引く程度。チョコボールを買ったところで金のエンゼルはおろか銀のエンゼルさえ出ない。凶の出ない神社のお守りを持つとはそう…続きを読む
2021年の激闘は延長までもつれこんだ。 AM対PM。相手より1秒でも多く獲得したチームの勝ち。元旦から勝負は平行線を辿り、スコアボードは両者ともに12時間で埋め尽くされている。延長後も互いに一歩も譲らず、膠着状態が続いていたが、数年後、勝負が動いた。延長1461日目、後攻のPM側が13時間を取ったと主張したのだ。AM側は12時間だと反論したが、審判による細かいビデオ判定の結果、13時間こそ取っていないものの、12.0016666時間を取っていたことがわかった。このわずかな秒数がサヨナラヒットとなり、2021年はPMの優勝で幕を閉じた。お立ち台にはサヨナラ…続きを読む
20××年。《あなたのまばたきを感じたい》そんなキャッチフレーズの玩具が発売され、若者を中心に大ヒットを飛ばした。商品名は「まばたきラブ」。 コンタクトレンズのようなもので、二人の人間がそれを装着することで、脳から発せられた電気信号によって相手のまばたきを同期させるというもの。つまり、自分がまばたきをすれば電気信号の働きで相手もまばたきをし、相手がまばたきをすれば自分もまばたきをする。この商品さえあればいつどこにいようと好きな人のまばたきを感じられる。 カップルたちの間で流行し、まばたきの多い人には恋人がいるといわれるようになった。ところがしばらくすると販売…続きを読む
走り幅跳び。驚愕の36キロ510メートル45センチ。この記録を作った男はアスリートの両親による英才教育によって生まれたときから死と隣合わせの環境で育った。崖の上での生活。崖と崖を行き来する毎日で、ジャンプ力がなければ死を意味した。12歳の時だった。脇の下にムササビのような飛膜ができていることに男は気づいた。通常、突然変異は個体の都合では発生しえない。しかし、科学的にあり得ないことが起こったのだ。20歳の時。男は飛べるようになった。そしてオリンピックの走り幅跳びで叩き出した驚愕の36キロ510メートル45センチ。まさに人類初。こうして男は永遠に…続きを読む