「まぁま〜〜!!!」私が台所で茶碗を洗っていると、庭で遊んでいるはずのコウスケが泣きそうな大声を響かせて走ってきた。「どうしたの?」茶碗を洗う手を止める。まん丸に大きく開いた目は、水分でウルウルして、今にも溢れそうだった。「あにょね……」そう言うと鼻をすすりながら、目をぎゅうと思い切り一回閉じてまた開いた。大粒の涙がピンクのほっぺたを避けて顎へと向かう。私は座って目線を合わせると、「うんうん」と聞く様子を見せながらも、素早く観察した。良かった。怪我とかではないようだ。「おウチがね、お空にういたの」「え?」何を言い出すかと思ったら。「おうち?」…続きを読む
いつもの通り道。小さすぎて何も建てられないくらいに小さな空き地だった土地に、小さな小さなお店が建っていた。確かに昨日までは空き地だった。確かに。まさか一日で建てたのかな?一階建てでサイコロみたいな形。何処の国の建物を模してデザインしたのかわからない、オリエンタルというのかヨーロピアンというのか不思議なデザイン。壁の色は、濃い紫やら深緑やらの暗めな色が目につくが、よく見ればパステルカラーや原色も入っていて、それで変な記号みたいな紋様が描かれている。何なの、これ。近づいてようやく看板の字が読めた。『喫茶店』と下手な字で小さく書いてある。外観は奇妙なく…続きを読む
「ごめんなさい。お砂糖もミルクもないんですよ。私も……その、アシスタント君もブラックしか飲まないから。」 刈谷幸三さんは、玄関からすぐの古びたミニキッチンから、百円ショップで買ってきたようなすぐ割れそうなマグカップを2つ持ってやってくる。 資料が山積みの事務机が無機質な壁に寄せられて二つ並んでいる。狭い部屋を少しでも広く使う為だろう。 それでも反対側の壁は資料の詰まった棚が並んでいて、椅子に誰か座っていたら人ひとりがやっと通れるスペースしか無かった。 「応接セットがなくて、……その、アシスタント君の机で悪いけど。」 そう言ってマグカップをひとつ僕の前に置く。 「ありがと…続きを読む
YOASOBIコンの発表が終わり、モノコンの受付も終わりましたね。楽しかったですね。次のイベントも楽しみたいです。そして毎日お題が始まりました!私、お題が毎日待ち遠しくて。大好きな妄想のネタがないと、物足りなくなってしまいました。最近は妄想癖が加速し、書きたいお話の種が頭の中にたくさんあります。その種は、毎日お水をあげて、茎を伸ばし、葉っぱをつけて。無事に花を咲かすまでに長い時間のかかる種ばかり。そんな種を適当に思いのまま、モノガタリーに撒いていたら、書きかけの長編が現在三作になってしまいました。ちょっと紹介を……。『国境の王族は…』中世のヨーロッパ風な…続きを読む
たくさんの馬車が石畳の大通りをガラガラと行き交う。その音は賑やかな人々の喧騒と入り混じり、綺麗な彩どりの壁や屋根の大きな建物の間を抜けてゆく。大抵の建物には色んな看板がかかっていて、その店先には女物の綺麗なドレスが飾ってあったり、キラキラした装飾品の小物が並んでいたり、美味しそうな匂いをさせていたりしていた。それに引き寄せられたたくさんのお客さんは、楽しそうに買い物をしている。この国は8年程前に現国王に代替わりした。前王時代もそれなりに豊かだったが争いが多かった。現国王の治世は平和で、そのせいで人心が穏やかなのかますます暮らしが豊かになったような気がする。6歳の女の子。明…続きを読む
【10番ホームに電車が到着します。白線の内側までお下がり下さい。】アナウンスがホームの天井の隙間から見える夕焼け空へと響いていった。私は重く疲れた体で足元の白線を見つめた。内側?小さな売店やベンチがある方が内側か。そこにはたくさんの人が電車を待っていた。家族連れ、サラリーマン、学生。普通の毎日を送っている人達。彼等には帰る家があり、彼等の生活圏があって、そこにはまたたくさんの人々がいるんだろう。私にも私の生活圏がある。だけども限りなく孤独だった。私だって誰かの生活圏に入っているはずなのに。どうしても、誰の生活圏にも入れていないようなそんな気がずっとしていた…続きを読む
私は天使です。今日も神様からお預かりした『幸せ電波』を地上の皆さんに送ります。残念ながら、どんなに天使が『幸せ電波』を出しても幸せになれない人がいるようです。受信できるはずなのに、自分から圏外にしてしまっているのです。神様からお預かりしているこの電波は、生きている人なら全ての人が受信できるはずなのです。今とても不幸で、どうしても幸せな気分になれないような人には、この先に幸せになるためのパワーになるのだそうですよ。だから、ね?さあ電波を送りますよ。圏内になってますか?いきますよ!(((((((╰(*´︶`*)╯)))))))…続きを読む
「オォイ!あれ、どこにやった!?」彼の不機嫌そうな低い声がリビングに響く。妻の私と子供達は一瞬で察知する。空気が変わる。「ねえ訳ねえだろうが!」「知らないよ」私は答える。それだけ。これが導き出したベストアンサー。何がないのか、いつまであったのか。親身になって聞いたり、間違っても一緒に探したりしてはいけない。彼の怒りは益々膨れ上がり、彼にも抑えきれなくなり、我が家に突如発生した嵐の被害は最大になる。押し入れをバン!と開けて中を適当に見て、チッと舌打ちをする。その彫りの深い奥から両目がギョロギョロと辺りを睨みつける。私も子供達も、目が合うと何が起こるか…続きを読む
ジャムおじいさん100円のあんぱん作るのに100円以上かかってますよ!わかってるんじゃあ!ジャムパーンチ❗️ーひゅるるる〜〜〜ー(くじけないもんね!)ジャムおじいさんそれなら、このあんぱん150円で売りましょう!だれが買うんじゃあ!ジャムパーンチ❗️ーひゅるるる〜〜〜ー(あきらめないもんね!)ジャムおじいさんそれなら、みんなをお金持ちにするためにお給料たくさんあげましょう!どこにそんな金があるんじゃーーー(泣)ジャムパーンチ❗️ーひゅるるる〜〜〜ー(負けないぞ!)ジャムおじいさんせめて仕事した分のお給料は下さい…続きを読む