「有原っ!お前は筆記用具もまともに持ってこれんのかっ!こんな消ゴムじゃ、勉強なんか出来んだろっ!」サイコロみたいなちっさな消ゴムを見て、歴史の穴川センセが何か言ってる。「はいはい~♪明日はちゃんと持ってくるから♪せんせー♪」怒られるのなんて慣れてる。消しゴムが大きくなったら、シャープペンに付いたジャラジャラがどうせ怒られるし、シャープペンがオッサンみたいに地味になったら、今度はスカート丈を怒られるんだ。今時忘れ物チェックなんて、バッカみたい。頭イイ子が忘れた時には確か「昨日、勉強して家に忘れたのか~?」なんて言って…続きを読む
通信技術が発達し、配信が誰でも手軽に出来るようになって、あの世とも通信や配信が出来るようになってきた。「はい、それでは今日の授業は『あの人は今』昔の人とお話をしてみましょう。亡くなったおじいちゃん、おばあちゃんとも話せるし、運が良ければ教科書に載っている人とも話せるかもしれませんよ~!」先生の話に途端に教室はザワザワし、各自机からタブレットを出して立ち上げ始めた。「私、卑弥呼と話してみたい!今の皇位継承についてどう思うのか話してみたいの。」…さすがクラス一の秀才、秀子。何言ってるかわかんないや。さぁて、僕は…僕も…歴史…続きを読む
イーリスは今日も天界から下界を見下ろし、ため息をついていました。どっちをむいても人間の男女のカップルは喧嘩ばかり。ちっとも幸せそうに見えないのです。「まったく人間ってのは不便な生き物ね。産まれた時に先天的に持っていた「男性」か「女性」、2種類の「器」を死ぬまで保持していかなくちゃいけないなんて。」そうなんです。魚や亀、カタツムリだって大きさや気温によって性別をコントロールできるっていうのに。人間は、一生性別の「器」を自然に変える事ができない稀な生物。その上、自分の持つ「器」と違う「器」をパートナーとする事を望まれているのです。つまり…続きを読む
暑い夏の日、アリはせっせと働いていました。冬に備えて餌を蓄えているのです。そこへキリギリスがやってきました。「アリ君、なんで夏のうちから冬に備えて働いているんだい?」するとアリは言いました。「僕はね、毎日コツコツ働くのが好きなんだ。毎日同じ時間に起きて、同じように働き、将来に備えて一生懸命に働く…。そのサイクルが僕にとっての安心で、幸せを感じるんだ。性に合っているんだよ。」そして言いました。「キリギリス君、きみは演奏旅行をしながらあちこち周っているそうだね。冬が来ると分かっているのに不安にならないのか…続きを読む
え?彼?恋人よ。そう、優しくて面倒見もよくて素敵な彼だわ。彼とはいつも一緒。テレビを見る時は膝枕をしてくれるし、眠るときは同じベッドで寝るわ。休みの日は髪をといてくれたり、散歩やドライブに行くの。彼ったらすぐ、私の写真を撮るのよ。待ち受け画面も私の写真。会社でもいつも私の事を自慢してるんですって。そう、会社で。ある日、知らない女が来たわ。彼が自慢した私の写真を見て、会いたいって言って来たそうよ。宣戦布告かしら。嫌な女ね。その女はそのうち頻繁にうちに来るようになって、私の場所だった膝枕もベッドにも、その女が…続きを読む
えーゴホン。それでは定例の「おばけ総会」を執り行いたいと思います。今回は昨今の事情を鑑みて、リモートPCでの総会参加、誠にありがとうございます。わたくしは、今回の司会を担当させて頂きます「落ち武者」と申します。どうぞよろしくお願いいたします。それではまず、ここ数年の傾向について取りまとめた資料Ⅰ【おばけの需要と供給についての報告書】をご覧ください。資料は先にメールでお送りした通り、添付ファイルにてご確認ください。ご用意はよろしいでしょうか。それでは資料と共にご説明させて頂きますのは、貞子さんです。よろしくお願いいたします。…只今ご…続きを読む
『返信のない手紙を出すポスト』って知ってる?それは何処からともなく現れて、お手紙を出したいけれど、もう出せない人への手紙を預かってくれる。そして、役目を終えるとスーッと煙のように消えてしまうんだって。ほらほら今日もポストが現れたようですよ…。※※※※※「はぁあああ…。」私は大きくため息をついた。今日は父の日。学校の授業で「お父さんに感謝のお手紙を書きましょう!」って、みんなでお手紙を書いた。「お父さんだけじゃなくて、お母さんやおじいちゃん、おばあちゃでもいいのよ。」って、先生は言ってたけれど私は「お父さ…続きを読む
僕はチロ。8歳。僕の家は忍君の家の庭。毎朝、お父さんと僕は散歩に出かける。それからご飯を食べる。そして、僕は…。「わん!わんわんわんわん!」元気いっぱい吠えるんだ。「おーチロ、行ってくるな。」お父さんが返事をする。「チロ!帰ってきたら散歩行こうね!」忍君も僕の方に元気いっぱいの笑顔を僕に向ける。二人はお出かけ。そのお見送りをするのが僕の仕事さ。二人が出かけると、僕は庭のパトロールの仕事に入る。匂いを嗅ぎまわり新しくマーキングを付けなおす。よしよし、今日も変な匂いはしない。それからやっと休憩だ。今…続きを読む
今日も僕は重いランドセルを背負って駅に向かう。学校、楽しくないんだ。宿題は多いし、みんな「ライバル」って言うんだって。僕は仲良く遊びたいのに。それに、朝の満員電車も僕は嫌いだ。大人たちの中に混じって電車に乗ると、すぐに埋もれてしまうんだよ。息が出来ないし、ぎゅうぎゅうして痛い。そんな事を思っていたって、電車の時間はやってくる。さて…、そろそろ時間かな。改札口へ向かおうとした僕は「…あれ?」いつもと違うものがあるのを見つけた。改札口の端っこにある『緑の小さな黒板』。こんなものあったかな。辺りをキョロキョロ見回し…続きを読む
「うわあああああ」寝てしまった。昨日は学校から沢山宿題が出ていたんだ。漢字ドリルに、計算ドリル、理科の実験のまとめも書いていかなきゃいけない…さらに明日はテストまでやるって先生が言っていた。もう、これは勉強するしかない。そう思って、僕は友たちとの遊びを断った。オヤツを早めに食べた。そして、長く勉強するために先に昼寝をすることにした。1時間寝よう。そして、そこから夕ご飯まで勉強をする。そして、夕ご飯を食べた後はまた勉強をする。僕の勉強大作戦の計画は完ぺきだったんだ。そして…「うわあああああ」っと、冒…続きを読む