20XX年、ついに恋の病が難病に指定された。歯止めの効かない少子高齢化、それに伴う出生率の低下、政府の最後の最後の最後の切り札として、ヤケクソと罵られ、お節介だと嘲笑されながらも、その法案は成立した。それから数年が経ち、いつのまにやら難病“恋の病”が庶民の生活に馴染んできたところである。これはとある病院の、外科、内科、小児科、泌尿器科、精神科、ではなくて、その隣にある恋愛科、のお話。都心の大学病院の中で、ひときわ空気の重たい場所がある。ため息はその性質上、同じような境遇の相手を見つけると互いに手を取り徒党を組む傾向にある。結果、スクラムを組み隙間なく分厚い層を成したため息たちは、…続きを読む