「今どきのファッションは~」「女性が見せる脈ありアピールは~」 インターネットやテレビからノイズが聞こえる。世間体は気にせずに、あなたにとっての一番の女を演じ切っているの。 それはあなたの恋人になるまで、いや、なった後も演じ切ってやるってもう心に決めている。 あなたと関わる中で趣味やマイブームを把握して、あなたがタイプだと言った女性像。いわば理想に近づいていく。 でも、まだ私の想いに気づいてくれないみたいね。残念だわ。わかりやすくしているつもりなのに。 でも、これだけは確信をもって言えるの。 女性慣れしていないあなたにとっては絵に描いたような女より、私の方がいいでしょう?…続きを読む
例えば、過去に戻れたとして、その記憶って相手にとってはどうやって認知されるのだろう。 僕らは今、クリスマスの街でイルミネーションを見ている。けど僕は想いを伝えられずに終わってしまうだろう。不安なんだ。 だから、君に会っている過去の日に戻って告白だけしたい。 仮に10分戻れたら、少なくとも告白はできるだろう。余暇を楽しめるかはわからないが。 なんならその記憶は僕だけ持っていればいいなと思う。10分だけでいいから過去に戻って告白をする。君から返事をもらう。 もし受け入れられれば現在に戻った時に告白すればいい。過去でフラれてしまったら今日は断念してもう少し期間を空けて挑戦すればいいのだか…続きを読む
君と鎌倉に来ている。学校が忙しい中、唯一の休みの日に会ってくれるだけで嬉しいものだ。よく誘えたよ本当に。今日を迎えるまでに何度自分を褒めちぎっただろうか。 今は鶴岡八幡宮で参拝を終えて小町通りにお土産を買いに行こうとしているところだ。 道中、境内におみくじがあるのを見つけた。「ちょっとあれ引いてみていいかな?」「いいよー」 期待を込めておみくじを選ぶ。選んだその一枚を広げた。吉だった。 一日こそ 人も待ちよき 長き日を かくのみ待たば ありかつましじ 和歌を流し読み、下に書いてある文字を読む。 恋愛 思うように会えませんがあせらないで愛を育てること 願事 待…続きを読む
大学から電車に乗り30分、押上駅に着いた。そこから半蔵門線に乗って数駅揺られるだけ。そんな毎日だ。 この電車を降りずに渋谷のその先で生活している君に会いに行きたい。この気持ちは何度目だろうか。 高校時代、委員会が一緒だった僕と君は何度も一緒に帰ることがあった。 九段下の駅、まだ一緒にいたい気持ちをこらえて、君が半蔵門線に連れ去られてしまうのを見守るしかなかった。その後で僕も東西線の各駅停車西船橋行きに乗り込んでいた。 学校が離れた今でもまだメッセージアプリを利用して連絡をしている。君にとっての僕はなんてことない暇つぶしのうちの一人だろう。 でも僕は、僕にとっては。 危ない、今…続きを読む
思えば、あの日も電車に乗っていたんだ。かれこれ5年前になるだろうか。初めての恋人と初めてのデート。東西線で葛西に行って、これまで電車の窓からしか見ることのなかったあの観覧車に乗ったんだった。 そういえば高校時代も。最寄りが九段下で、土曜の学校帰りは渋谷に押上、そして池袋。まるで迷路のような路線図を臆することなく進んでいた。 私は今、大学生になった。電車に揺られて、今日も生きている。5年前のあなたは隣にはいないけど、あの日の友達と会う機会は減ったけど、寂しくない。 だって、電車は辛い過去も楽しかった思い出も一緒に連れて、私を新たな未来へ導いてくれるのだから。 手元に握りしめてい…続きを読む
錦糸町のとあるカフェで待ち合わせをした。 10分以上前に着いたのに、あなたは既にいた。本当にしっかりした人だ。「遅くなってごめんね、待った?」「俺も今着いたとこだよ。遅れたわけじゃないんだし謝ることないよ」 この会話は毎回会うときに展開される。社交辞令だと思われていないことを願う。 私たちは高校時代の同級生だ。今は別々の大学に行っているため、月に1回くらいのペースでこうして会っている。 電話などでも喋っているが、実際に声を聴くとまた別の嬉しさがあった。何より同じ空間で時間を共有しているということも。「それでさ、その授業で友達がね、...。」「まじかよ、その友達めっちゃい…続きを読む
「春風に散らされた」https://monogatary.com/story/180796…続きを読む
今年も君を忘れるなんて無理だった。正確に言うと忘れきることが出来なかった。少しずつ、その笑顔を、そのおさげの髪を、甘えたいときにわざと冷たくすると口をぷくって膨れさせるその姿を、好きなことを語るときに手をぐっと握る姿を思い出せなくなっている。だが、忘れたと思った矢先僕の脳裏に現れる君は、まるで花火のようだ。僕が君との記憶に縋るたびに、君の背中は一歩、また一歩と遠ざかっていく。僕が君を追おうとするたびに、後ろめたさが僕を妨げる。この夏、友達と花火をした。線香花火が散っていく。儚く散った僕の恋心のようだ。いや、君みたいだったかもしれない。わからない。夜に輝くこの想いも、この花火と…続きを読む
「ねぇ、もう少しでヴィーナスフォートが閉まっちゃうらしいよ」ぽかぽかとした天気の下。家の近くの公園のベンチで、隣に座る君が言う。「まじか、4年くらい前に行ったよなー。よし、今度もう一回行くか」「うんっ!そうしようよ!」 僕の言葉に大げさに首を縦に振る君が愛しい。ポニーテールが元気に動いているのを横目に、僕は小さくあくびをした。「そういえば、観覧車もなくなっちゃうんだってね。一緒に行ったところが壊されるのって、なんか悲しいね」 なんて君が言う。確かにそうだと思う。俺らが住んでいるこの場所も、少しずつ変わっている。嬉しいことだか寂しいことだかわからない。「まぁ、しょうがないことだよ…続きを読む