あなたに会えることが私は幸せなんだよなんて言って困らせてはいけないかなあなたの気持ちが私に向いていないことがあなたに対する唯一の苦しさなの始めてふと手が触れた時のあなたの手の温もりを思い出しては冬では冷たいだけの私の手も夏になったらひんやりしてると握ってくれますかそうした後で私の名前を呼んでたった二文字の想いを言ってくれたら幸せなのにこの冬の寒空の下のせいかなあなたの心も温かくならないのは降り積もる雪が溶ける頃にはあなたのかじかんだ心に手を差し伸べるかもね私の小さく冷たい手なんかじゃあなたの心は温められないね冬では冷たいだけの私の手も夏になったらひん…続きを読む
さよなら。私の心の中で何度反芻しただろう。 さよなら。その言葉くらいは嘘であってほしかった。でも、あなたが嘘をつかなくても生きていけるようになるためには、そんなわがままなことを言ってはいけないだろう。 部屋の電気を消した夜の中。暗闇に慣れた目と、月の光だけが頼りだった。 あなたと過ごした夜を、今はひとりで過ごしている。 窓辺に座っている私を窓ガラスが無遠慮に映した。無心な私が見つめてくるから、私は笑みを返した。窓ガラスの奥にいる私も笑い返した。簡単な顔して笑わないでよ。 窓辺から移動しようと立ち上がったところで、何かを落としたみたいで軽い音が響いた。何かを拾い上げる。小さなステ…続きを読む
あなたと一緒に花火を見たあの年、あの時からかれこれ3年経った。 そして、私が最後に花火を見たのは、あなたと一緒に見たあの花火だった。 あなたと花火を見た翌年、私は部活の合宿で花火大会に行けなかった。その次の年も。まぁ行く相手もいなかったわけで、どっちみち見なかっただろう。 でも、去年、友達と行こうと約束までしていたのに、花火大会が中止になってしまった。今のご時世仕方ないだろう。それでも、行きたかった。 まだ梅雨が明けないこの頃だが、今年も花火大会は中止になるだろうと察しがつく。この一年間で変わったことと言えば、非日常が日常になったことくらいだ。 だからこそ、私は待っている…続きを読む
「明日は一日中全国的に晴れるでしょう。また、週末も九州地方は雨雲が心配ですが、他の地域は晴れ予報なのでピクニック日和ですね。続きまして...」 テレビの電源を切って、冷めきった紅茶を飲み干す。こんな時くらい大雨でいいのに。全員に平等な不幸を降らしてやりたい。そんなこともできないだろうけどね。 彼氏にフラれてすぐに立ち直れる私ではなかった。恋愛は無傷でいられないとは聞いたことがあるけれども、こんなにとは思ってもいなかった。 今日は5年目の記念日だったはずの日だ。せっかくの有給が台無しだ。何もすることがない。何もする気が起きない。 それでもせっかくの休みなんだし、散歩に出ようと思…続きを読む
もう君のことなんて忘れてやるさ。なんたって別れてずいぶん経つからね。 確かに今までは未練たらたらで最低でも一日一度は君のことを考えていたよ。嬉しかったこと、辛かったこと、新らしいことができた時なんかは君に伝えたくて仕方がなかった。 でも、そろそろそんなことを言ってられなくなったんだよ、友達にずっと同じことを言っていたら呆れられちゃったからね。 君が写ってる写真だって近いうちに消すよ。もうちょっとだけ待ってほしいけどさ。それと、君が僕と付き合っていた頃、スマホのロック画面に使っていたあの写真、僕も同じものをロック画面にしていたけどそれも変えるよ。 あとはなんだろうか。まだ心の中で君…続きを読む
どうしてなんだ。 昨日投稿した物語、あまり評価が得られていない。これは個人的には最高の出来だったのに。 むしろ、それより一つ前に書いた作品。あっちはあまりぱっとしないまま投稿したのに、評価がいい。 ここは無音の世界だ。だが、人の心がなんとなく伝わってくる世界なのだ。例えば、誰かが僕に対して拍手をしたとしよう。そうすると、拍手の音は聞こえないが、確かに拍手を送ってくれたことはわかるのだ。 誰かが涙を流せば、それは伝わってくるし、笑い声は聞こえないが笑ったことは認知できる。相手の声は聞こえないが、その気になればコミュニケーションさえもとれる。そんな世界、僕は物語を書いている。…続きを読む
流石に彼女もしびれをきらしたかも。そう思った頃には手遅れだった。 デートの最中、僕は彼女と喧嘩をしていた。「そういうところ、いつまで経っても治らないよね。」「ごめんって。ちゃんと気を付けるから」「そう言って何年も治ってないじゃん。」 正論だった。彼女の言うそういうところと言うのは、僕の悪い癖のことだった。僕は毎回のように待ち合わせに遅刻していた。5分程度、電車1本分とかなら仕方ないとして、30分以上の遅刻や、短針が1周するくらいの時もあった。「予約してたプラネタリウムの上映間に合わなかったじゃん」 楽しみにしてたのに。と続けてぽつりと呟いた彼女に本当に申し訳なく感じた。 彼…続きを読む
宇都宮駅のプラットホーム、駅にはぽつぽつと人がいた。改札前でお母さんに別れを告げたばかりだった。 高校を卒業して私は上京する。と言っても北関東に住んでいたから、そこまで遠くはない。 私はとても嬉しかった。第一志望の大学、様々なジャンルの最新の流行が簡単に手に入る街。憧れだった一人暮らし。すべてが嬉しかった。 対して今まで住んでいたここは住みにくかった。そこまでの不自由さはなかったものの、良くも悪くも思い出が詰まった町になったから。 小学生だったころ、友達と喧嘩して酷く傷ついた通学路。 中学時代、初めての恋人と一緒に行ったデートスポット。 高校時代、二人目の元恋人と見に行った…続きを読む
今日は高校の同窓会の日だ。ちょうど10年ぶりの再会だったから、とても楽しみにしていた。 会場に着くと、さっそく高校時代仲の良かった友達に会うことができた。とはいえ、友達とは高校卒業後も会ってたりしていたから、そこまで久しぶりというわけでもなかった。 それよりも、昔と今とで変わった人が多くて驚いた。例えば、昔は眼鏡をかけていて地味だった伊藤さんが、コンタクトに変えてとても綺麗になっていた。ほかにも、クラスのお調子者だった佐々木くんが有名な大企業で働いているなどだ。 他にも、結婚をしたという人もちらほら見かけた。中には一児のパパになっている人もいた。 話を終えて、次は誰に話しかけよう…続きを読む
学校からの帰り道、彼女と二人で駅まで向かう。 彼女とは一カ月前にサークルで知り合って、それ以来密かに想いを寄せていた。 こういう言い方をするとナルシストとか思われそうだけど、彼女も僕に気がありそうだった。いや、脈ありだってわかるサインとかあるじゃん?そういう感じだ。「それで元カレがさー、もうちょっと気遣ってくれてもいいじゃんって思ってさ」 彼女が僕に元カレの愚痴を言うのは今日に始まったことじゃない。元カレの話に限らず、彼女が何かを話しているとき、僕は聴く側に徹する。 中学時代に付き合っていた人には、僕は僕の話ばかりしていて彼女の話をまったく聞いていなかった。付き合っていた時に…続きを読む