カラダ中から悲鳴が聞こえてくる。ガラス瓶の中にいた時には何も感じていなかった。『ソレはまだアナタのものじゃないわよ』『ん?』どこからか語りかける声に意識を傾けた。『初めまして、カイリ。ワタシは彼の中で起こったことをまとめている、管理者みたいな役割をしています』『管理…者?』『いつもはワタシが彼から生まれてきたヒトたちを管理用に名前を付けていたんだけど、初めてよ、自分で名乗ったヒト』『アンタの名前はなんだ?』『ワタシは…管理する必要がないから名前なんてなかったわ。そうね。呼びたければ好きに呼んだらいいわ』話をしているうちに、姿がだんだんと見えてきた。…続きを読む
最初の記憶というか意識をオレはハッキリと憶えている。ベッドの上で見上げた天井、テレビの音声。「おはようございます。今日のお天気はどうなんでしょうか?」オレは数日前くらいからヤツの頭の中にいて、ぼんやりとしていたのに急にハッキリと周囲が見え始め、音もしっかりと聞こえ始めた。曇りガラスの瓶にいたのにそこから出た感じだ。そしてオレがいた場所にはヤツがいて、丸まって眠っている。そういうイメージがふわっと伝わる。ヤツはとうとう、オレを生み出してしまったらしい。オレは『カイリ』そう自分を呼ぶことに決めた。なんとなく、ヤツと区別したかった。ヤツの名前も知らないし、名前って重要…続きを読む
カランカラン。ドアを開ける時にベルが鳴る。レトロな雰囲気の珈琲店。店員はカウンター奥にマスターが一人。カウンターを挟んでテーブルを拭いているウェイトレスが一人。客はいない。奥にあるテーブル席へ座る。キミと早く話したくて。「ご注文はお決まりですかぁ?」「アイスコーヒーお願いします」メニューも見ずに僕はキミを見ながら注文するけど、キミは僕を見ないように横を向いたまま。「ミルクとお砂糖はどうしますかぁ?」「あ、要らないです」「かしこまりましたぁ」深緑色のベルベッドのソファに軽く腰掛ける。「ありがとう。もう話すらできないかと思ってた。ずっと無視されてたから…」…続きを読む