目の前に広がる日本海にはどこか寂しげな雰囲気がある。今年は暖冬だなんて今朝のニュースキャスターは言ったが、例年との差はほとんど感じない。今だって厚手の手袋をしているのに、もう指先に力が入らないくらい悴んでいる。 遠くの沖合で汽笛が鳴る。ぽー。近くで聞けば迫力があって耳を塞いでしまうような音も、こんなに離れているとどこかまぬけな響きだ。そうだ。僕たちも、近すぎたのかもしれない。「しばらく距離を置くことにしよう。」 そう言いだしたのが僕だったのか、エリカだったのか、今では思い出せないが、お互いに同じことを考えていたのは確かだ。僕たちは学生の時から5年も付き合っていて、いわゆる倦怠…続きを読む