ある道を僕はよく歩く。人通りが少ない少しの街灯がある細めの道だ。いつもは人とすれ違うことはほとんどない。あの日は雪が降る夜だった。雪といっても本格的な雪ではなく、粉砂糖のような雪だ。ケーキの上に粉砂糖が降りかかるように地面も白くなっていく。この日も僕は1人でいつもの道を歩いた。すると、珍しく前から人が歩いてきている。その人は黒い髪に白い肌がよく目立つ綺麗な顔立ちの女性だった。独特の雰囲気を持ち、彼女は薄い膜に包まれている。初めて見かけたけれどそう感じた。ちょうど僕の10メートル先ぐらいで彼女は立ち止まった。そして空を見上げて、ふっと微笑んだ。まるで空に誰かいるか…続きを読む
「ガタン、、」部屋の中で何かが落ちた音がした。部屋の中はぐちゃぐちゃに散らかっていて整理整頓ができていない部屋になっている。「あ、、、まただ。」昨日もそのままで寝てしまった。あの人がうつった写真をずっと消せないままでいた。あの人が似合うと言ってくれた黒いアイシャドウを塗りながら目が腫れているのに気がついた。本当は何も思いだしたくないのに何故かずっとこの色を使っている。「朝か」雨が降っていて外は薄暗い。遮光カーテンのせいか「まだ夜じゃないか」とも思う。夜明けと分かっていてもまだ夢の中にいたい気持ちを抑えて、私は家を出た。…続きを読む
電車で聞いた音楽。駅で撮った写真。駅からの道。あの人の後ろ姿。何故か最近すごく思い出す。もう別れているのに、これから会うことはないのに。あの人が笑ってくれなくなったのは、話してくれなくなったのはいつからだろう。私の前では笑顔ひとつ見せずに、私を存在しないもののように通り過ぎていく。もっと話したかったのに、ほんとは苦しくて悲しくて寂しかった。でも私は嘘をついて何もないように振る舞った。自分を苦しめていたんだ。私は小さい頃から自分の気持ちを表に出すのが苦手だった。今だってそうだ。私はそれに耐えきれなくなって逃げた。あの人と一度も話さないで。私がいなくなってあの人が少しで…続きを読む
「今、何してる?」 「君のこと考えてる」「今、何してる」 「君に好きって伝えようとしてる」「今、何してる?」 「君のことで悩んでる」「今、何してる?」 「君のこと忘れようとしてる」「今、何してる?」 「涙を流してる」「今、何してる?」 「生きている」…続きを読む
〜春風〜桜が咲くか咲かないかの時期になると思い出してしまう。1年前のあの日、春風の中渡した手紙その手紙がそこから一年続くあることに関係している。2年前から説明します。〜2年前〜4月、新学期になり色々なことが決まる。掃除の班、委員会、、、私に関係するのはこのくらいだ掃除の班で私はあの子と同じ班になった。初めの頃はただの先輩だった。5月6月と進んでいき、7月になった7月にはプールが始まる。プールサイドで私が友達と話しているといきなり「好きな人いる?」と聞かれた。私はこの時嘘をついた。本当はあの子のことが好きだったのに、いないと答えた。あの時正直に言っておけば後…続きを読む
青い。それはどんな人でも心に感じるのだろう。彼との間には透明な目には見えない壁を感じる、それは私だけなのだろうか。彼が真実を語る人はいるのだろうか。私はそんな青い心の奥にあるものに気づけなかった。5年前、彼の友達は事故で亡くなった。彼はまだその情景を思い出してしまう、その瞬間を見たのだから。事故が起きたのは彼がその人と喧嘩をした次の日の夜だった。きっと疲れていたのだろう、辛かったのだろう。信号が赤になって飛び出した。その瞬間、時が止まった。彼は謝ることができずに友達を失った。その時から彼の心は青くなってしまったのだろう。その傷はこの先も消えない、薄くすることはできても…続きを読む
君と過ごした日々は夏の空に消えていった。君との思い出たちが頭の中に蘇ってきた。この感情はなんだろう。君に対する思いがなんなのかよく分からない。友達としての「好き」なのか、恋愛的な「好き」なのか。手を繋いで走ったあの日のこと、君はどう思っているのかな。あの時本当はずっと離したくなかった。この手を離したら、君がどこかに消えていってしまう気がした。砂に残った足跡が、あの時の後ろ姿や手の感覚を思い出させた。「まだこの夏が終わりませんように」そう願った。「あれから会ってないけどまた会えるよね」そう言葉では思っていたけど、勝手に足が動いていた。体は正直で、心が思ったことを言葉を気にせず行動にうつす。…続きを読む
左手3年前からずっと残っている手の感覚、温もりが今もあの日を思い出させる。3年間も手を握られてないからずっと残り続けてるのかな。あの日起きた私にとって人生で一番辛かった出来事。そこに至るまでの何ヶ月かを先にお話しします。1出会い私とあの人が出会ったのは5月ごろ私は大学一年生だった。少しこの生活にもなれてきた頃で友達もできてまぁまぁ充実していた。大学生ともなれば人並みに好きな人もできる。私は同じ大学の2つ先輩の男の子を好きになった。結構かっこよくて、モテている人だった。私は3ヶ月ぐらい片思いを続けて、ついに告白をした。結果はok。この時に周りの噂に気付いていれば後々こ…続きを読む
今日は日曜日毎週必ず同じ曜日の同じ時間帯にそこに座る。名前は後藤くん。この前友達に呼ばれているのを少し聞いた。私は後藤くんに一目惚れをしてしまった。初めて後藤くんを見かけた時から、私はこのカフェに通い続けている。毎週同じ時間に、斜め後ろの席に座る。向こうは私のことなんか気にしてないのに。後藤くんが来るのを待つ時間が一番好きだ。今日も待っている。今日は少し遅いのかな?いつもの時間にここに来ない。すごく心配だ。もう後藤くんを待ってどのくらいになるんだろう。もう1時間経った。私は自然に後藤くんの顔を思い出してた。初めて見た横顔背中から感じるかっこよさ斜めから見…続きを読む