ご覧いただき、ありがとうございます。
ともかさ こころと申します。
どうぞよろしくお願い致します。
☆西野カナ×monogatary.comコラボコンテストで大賞を頂きました。
皆様のおかげと感謝してもしきれぬ思いです。
「勇気の行方」
https://monogatary.com/story/228318
☆少し、のんびりペースでの投稿になってます。
☆「reborn~年下の彼」連載中!
宜しければご覧ください。
☆ひなた様、由紀椋真様、花笑様、青いてんとう虫様に挿し絵のご提供頂きました。どれも大切な宝物になりました。心からの感謝を。(交互にアイコンにさせていただいています)
5月24日 今日、手帳を貰った。 赤ちゃんの表紙の母子手帳。 これから沢山、書いていこう。 6月17日 悪阻が始まる。 何をしても気持ちが悪い。 息をするだけでも気持ちが悪い。 食べないとと思うけど、無理。 そしたら夫がアイスを買ってきた。 しかし、それも無理だった。ごめんね、パパ。 (初めてパパと言ったら、嬉しそうに笑ってた) 6月29日 ・・辛い。気持ち悪い。 あまりに辛くて病院へ行ったら、お薬が出た。 どうしてもつらい時は飲んでくださいって。赤ちゃんには影響もないとも。 でも・・もしも何かあったらと思うと結局心配で、飲めなかった。 7月…続きを読む
それは、雨が降ったから。 ……だから、俺は。 * サークルの集まり。 今年で卒業する俺たちにとってこれが最後の集まりとなる。 未練は尾を引いて遅くまで飲んでいたが、それでもまだ物足りない奴が集まって部長でもある慎吾(しんご)の部屋で飲み直そうということになった。 俺は、なんとかしてそれを阻止しようと頑張ったのだが、数の暴力には太刀打ちできずとうとう家の前に着く。 「はぁ…じゃ、俺はここで、帰るわ」 家の前まで来て、もう阻止することは出来ないことを悟り、帰ろうとする。 「何言ってんだよ! ここまで来て。 律(りつ)も付き合え~」 「いや、俺は……」 酔っ払…続きを読む
口から心臓が、出る。 これ以上、心拍音が早まったなら、多分、飛び出してしまう。 そう思いながら私は、彼の二歩後ろ。 海岸通りの遊歩道を進む。 俯いた目に映すのは、夕暮れに少し長くなった彼の影。 街路樹の影と合わさる度に、ゆらゆら、ゆらゆら、揺れている。 潮風が、プリーツスカートを揺らして通り過ぎた。 びゅう。 「ちょっと寒いか?」 振り向いて順平(じゅんぺい)が言う。 頭を振るだけで、返事をした。 口を開けば、たぶん好きが溢れてしまうから。 「ごめんな、晶(あきら)。急に呼び出して」 大好きな笑顔が話しかけてきても、私は返事が出来…続きを読む
緑川 梨央(みどりかわ りお)30才。 独身、彼氏なしのOLだ。 最近はお局とか、周りにささやかれ始めてるのを知り、本人は若干……いや、本当はかなりへこんでいる。 そんな鬱々とした日々を送っていた、ある日。 ランチを食べに公園のベンチへやってきた。 残る数少ない同期の恵美といつもランチをしているのだが、今日は恵美もお休み。 周りに一人寂しくランチと思われたくなくて、この会社近くの公園で食べることにした。 「ふう」ため息が零れる。 いやいや、落ち込んでどうする。 落ち込んでも、何も変わりはしないんだから。 でも、結構気に入ってるんだけどな……今のこの生活。…続きを読む
「うわっ、凄いですね、これ」 俺たちがプレイしているバトロワのアップデートが行われ、リニューアルした武器を手にして信長が声を上げる。 「おおっ、本当でござる! こんなの、凄いでござる~」 今、あられもない声を上げたのは、そう、ご存じの通り酔いどれ忍者・・・もとい、ありさである。 こんな愉快な仲間たち?(主に一人を指す)と俺がいるのは、都内のネットゲームを専門として開かれたブース。 ここは、最近出来たバトロワゲーム専門のハイテクを駆使したバトルブースで、俺たちのプレイしているゲームもここでは最新の設備で出来る上、つい先日行われたアップデート後の変更点や、新規に追加され…続きを読む
電話を終え、席に戻る。 そこには、先程戻った時に感じた違和感はなく、皆の視線も俺に注目してはいない。 それぞれにこの席を楽しんでいるようだ。 ありさは、先程から語尾がかなり酔っ払いのそれになっているのだが、今も心配する信長の制止も聞かず、「これと同じのもう一杯、頼みまふ~」と通りがかりの店員さんに呼びかけている。 タイガーとキャミーと咲希はなにやら楽しそうに、キャッキャと談笑しているようだ。 「いや、だから~あそこで~スナッチボムを出さないから~ダメなんですよ~」 「え? 後の事考えたら、あそこはシェイクギアで接近戦だよ。 ね? クイーンさんもそう思うでしょ?」…続きを読む
『はぁ、はぁ、はぁ……』 聞こえるのは自分の息遣いだけ。 毎日、寝起きのまだ動ききらない体に鞭打ち登るこの坂を、今全速力で駆け下りている私は、一体何から逃げているのだろう。 ……あと、もう、少し。 思考のまとまらない脳で、求めていたのは眼下に見下ろす海の光り。 この季節のこの時間だけ、太陽を照り返し輝くその光が見たくて懸命にここまで駆け下りてきたけれど、それは、思っていたよりもぼやけた形で目に映った。 目的地に着いた途端、今まで我慢していた分とばかりに私の体が酸素を求め喘ぎ始めて、胸いっぱいに空気を取り込みたいと叫ぶのに、全く上手くいかずに心臓が心拍数を…続きを読む
見慣れた我が家の天井。 今、目覚めた私はそれを眺めて、ほっと胸を撫でおろす。 入院していた時にみていた無機質なあの白い天井ではない、馴染みのある模様。 このところは、痛みを止めるための薬がやや強くなりすぎていて、意識が混濁することも多くなっていた。 そんななか意識を取り戻すたびに迎えてくれる、この見慣れた天井にどれほど安心したか分からない。 ふう、と一つ息を漏らし周りを見渡す。 薄暗い室内だが、ドアを少し開けておいてくれている家族の心遣いを見つけ嬉しく思う。 ああ、それにしても、今日は本当に気分がいい。 最近では記憶も朧げになることも珍しくないのに。 今日は思考が…続きを読む
俺は個室の扉をそっと開け、周りの話を邪魔しないように空気を読みつつ着席する。 「あ、ゴエモンさ~ん。 おかえりなさ~い」 俺に気が付いて、女性らしい可愛らしいお帰りをくれたのはキャミーだ。 「はい、ただいまです」と、にこやかに頷いてみせる。 そのまま、するりと空気のように輪に溶け込み、邪魔にならない程度に相槌を打ち、共感を示せば、ほら、大概は上手く回っていく。 なのになぜ…。 俺は今、そのことにうっすらと嫌悪を抱いているのか? その思考に、顔にへばりついた笑顔の仮面の口角が、また下がりそうになっていることに気が付いた。 いけない、と気を逸らそうとして、目線を泳…続きを読む