僕は冬の寒い日、外で大切な命を見つけた。 僕は、白くて小さな命をそっと家に持ち帰った。でも、これはママには内緒だ。だって、きっと怒られるから。 僕は、部屋のクローゼットに小さな命を箱の中に入れて隠した。大丈夫きっと見つからない。僕は毎日こっそりと確認した。ママに見つからないようにこっそりと。 僕が命を見つけてから季節が変わり春がきた。まだ、ママには見つかっていない。 外も暖かくなってきたし、そろそろクローゼットから出さないと駄目かもしれない。僕はクローゼットから箱を持ち出すことにした。 そっとそっと階段を降りる。大丈夫、ママは今掃除中だ。きっと大丈夫。「どこに行くの?」 僕…続きを読む
「ただいま」 私は、誰もいない暗闇に帰宅を告げる。待っていてくれる人がいなくなった今も、長年続いた習慣はやめられそうになかった。 彼がこの部屋からいなくなって3ヶ月。彼の持ち物が綺麗に無くなったこの部屋で、彼を思い出すのは少しずつ減るはずだった。そうあれさえ無ければ。「葵、これはあげる」 部屋を出ていく日、彼が私にドロップの缶を渡してきた。「ドロップ?」「葵、これ好きだっただろ。今までのお礼とお詫びがわりにあげるよ」「ありがとう…」「じゃあね」 そう言って最後の日に彼に渡されたドロップの缶だけが唯一私の部屋に残った彼との思い出だ。 今思えば、私と彼とは正反対だった。私と…続きを読む
私達は、公園を散歩している。 そして、私の隣には、数週間後には彼氏から旦那へとレベルアップする彼がいる。「結婚式まで、もう少しだな」「そうだね。天気いいといいな」「晴れ男をなめたらダメだぞ。きっと快晴だ」 彼が胸を張りながら言うので私は笑ってしまった。「結婚式終わったら、もう彼氏彼女じゃなくて夫婦って呼ばれるんだよね。嬉しいけど、ちょっと恥ずかしいね」 すると、突然彼氏が真面目な顔をしてこっちを向いた。私が不思議な顔をすると、彼が私の両肩を掴んだ。オシドリよりメジロになろう俺達は「え、俳句?え、メジロ?」 私のビックリした顔を見て彼は笑った。「昨日、テレビでや…続きを読む
我が娘さすが申年キーキーキー(怒りかたが申年だからと言うわけではないですが、キーキーと怒る娘。ちなみに卯年の息子はウサギみたいにイライラすると足でどんどんします。そして私は酉年、ニワトリみたいにうるさいと言われます笑)…続きを読む
「俺は、ミュージカルスター。出来る!やれる!歌える!」 俺は、自分に暗示をかける。「よし、いくぞ」「母さん、お願いします」 この一言ですべてが始まる。 すると、母親は洗いものの手を止め俺を見た。「分かりました。では、健太からで」 俺は息を整えると、ゆっくりと歌い出した。 俺は~母さんに~お願いが~あります~♪ 俺は全身を使って歌う。 さてはっ♪ こづかいの♪ 前借りね~♪ それに対して母親はエプロンをスカートの裾のようにヒラヒラさせながら歌ってきた。 分かって~いるなら~話が早い~♪ お願いしま~す、お願いしま~す、お~ね~が~い~し~ま~す~♪ ダメ…続きを読む
会社の帰り、私は同僚の那美とマンションのエレベーターの前に立っている。「どうしたの?何か嬉しそうだね」「うん、ちょっとね」 那美の質問に私は曖昧に答える。 私達は同じマンションに住んでいる為、朝は一緒に出勤したり、こうやって会社の帰りが一緒になることが多い。ちなみに那美は私の一つ上の階に住んでいる為、私は一足先にエレベーターを降りる。「また、明日ね」「うん、おやすみ」 私は、那美に別れを言うと自分の家へと急いだ。だって今から私の大切な時間だから。(彼は、まだ帰ってないかな) 彼と私の出会いは、隣に引っ越してきた彼が引っ越しの挨拶にきてくれた時だった。 その日は休日で、私…続きを読む
「疲れた…」 私は、今始発電車を待っている。昨日は、次の日休みなのをいいことに私は、友人と飲み明かしてしまった。(今日は休みだし、家でゆっくりしよう。) 今から、仕事に向かうであろう人の先頭に立ち申し訳なさそうに私は電車を待っていた。(少し気持ち悪い…) 私は、電車を待ちながら体調の悪さを感じた。そこで、電車に乗るのを諦めて、ベンチにでも座って落ち着いてから帰ろうと思った。 私がベンチに向かってヨロヨロ歩いていると、走ってきたサラリーマンとぶつかった。その瞬間、私は弾かれて、酔った足は衝撃に耐えることが出来ず、私は、ホームの下へと落ちた。 気がつくと、私はホームのベンチに座って…続きを読む
知夏と大和は、最後のデート中だ。「明日は、引っ越しだね」「そうだな」 私達の恋人関係は、今日で終わる。 明日から、私達は、『家族』になる。「明日からなんて呼んだらいいかな。やっぱり、お兄ちゃん?」「「あのさ、俺は」内緒にするって、約束したよね」「分かってるよ…」 学校も住んでる場所も離れている私達は、バイト先で出会った。話して見ると、共通点が多く、すぐに仲良くなり、そして数ヶ月前に交際が始まった。 知夏と大和はお互い片親で、知夏は父親、大和は母親を小さい頃に亡くしていた。だから、よく自分の親に恋人が出来たらという話もよくしていた。 そんなある日、知夏は、母親から結婚を前…続きを読む
「うっ…、うっ…はっ!」 私は、何かに上に乗られたような息苦しさを感じて私は目を覚ました。(やばい…。金縛りだ…。動けない) 私は、体を動かせない変わりに必死に目を動かした。その瞬間、(ひっ!) 突然、視界に金髪の男が現れた。「やっと起きた。遅いよ」(誰?というか何で私の上に載ってるの…)「あれ?しゃべれない?」 私は、頷けない代わりに瞬きでyesを伝えた。「ごめん、ごめん。動くと危ないから解くのは声だけね。でも、絶対叫ばないでね」 私はまた瞬きで答えた。金髪君が、私の喉に触れた途端に、喉がすっと軽くなった。「誰ですか?もしかして、幽霊ですか?」 私は、声を抑えながら…続きを読む
君とコンビを組んだ日の事、今でも覚えているよ。 君を初めて見た時は、本当にかわいい女の子だなって思ったよ。君は年齢より幼く見えるからコンビを組んで大丈夫かなって心配したんだ。でも、だからこそ、せっかく私を選んでくれたからには、しっかりと頑張らないとって決意したんだ。 実際、コンビを組んで活動するまでにはかなりの時間があって、シミュレーションも万全に出来た。だから、本当にうまくやっていけると思ってた。 でも、甘かった事に気がついた。君の見た目に騙されていたよ。やっぱり上にお兄ちゃんがいるからかな。君は、かなりボーイッシュ、いや男勝りと言えばいいのかな。かなり当たりが強くてびっくりしたよ。…続きを読む