二ヶ月前の出来事だった。次の駅を告げるアナウンスに敏感に反応する。目的地に早く着いて欲しいような、そうではないような、むず痒い感覚が続く。佐々野は黙ったまま、しかし穏やかな表情で、窓越しに流れる景色を眺めていた。 夜が近づいている。青い闇が次第に降りてきて、家々の明かりも見受けられるようになった。電車のブレーキがかかるたびに私の身体は危うくゆれた。その度に手すりから手を放し、空中で身体を抱えるような仕草をされる。彼の衣服に染みついた線香の匂いが鼻をくすぐる。心臓の鼓動が早くなる。「ごめん、大丈夫」 彼は手持ち無沙汰になった両手を握った。いつもと違う沈黙が窮屈だった。発した言葉が思…続きを読む
「今日ってここであってる……?」「URLをみる限り、あってるね」「え、ファーストフード店で合コン?笑」「斬新だね!笑」女性陣は一抹の不安を抱きながら、ファーストフード店へ入った。2時間後。合コン自体はそれなりに盛りあがった。最後に幹事がはつらつと言った。「一人¥500でよろしく。みんなワンコインですんで、ハッピーだね!!」なんとも言えない空気のなか、女性陣はワンコインを渡したのであった。 【了】…続きを読む
わたしはB面の人生を送っている。なぜなら職業がゴーストライターだからだ。彼女がA面の人生だとするなら、わたしはB面。なんてぴったりな言葉だ。ああ、せつない。けれど彼女が表舞台にたち、サイン会で客に対してにこやかに接する姿をみて、静かに誇りをもち、近くに立っている。客が購入した1冊はわたしと編集者が仕上げたものであり、決して彼女の言葉ではない。わたしの内から湧いた言葉だ。文章だ。ストーリーだ。彼女は確かに美しい。佇むだけで華がある。しかし記者に対して取材で語る内容は異議を唱えたい。そういう意図ではない、と何度も言葉を飲みこんだ。大人の事情でゴーストライターに徹しているわたしだが、いつか小説家だ…続きを読む
桜木しんどい子さんはなにをやらせてもだめでかけっこもだめ勉強もだめ絵をかくのもへた告白も成功したことがない大人になってもよく転び傷だらけよく怒られ結婚もしてませんでもいつも笑い自然と席もゆずれる桜木しんどい子さんは元気です 【了】…続きを読む
ツナとキュウリを小口切りにして、マヨネーズと胡椒で和えるだけ。塩はお好みで。小さい頃から結構好き。作り方はシンプルだけど、なかなか美味しい。 【了】…続きを読む