「空」の細い指が好き。笑うとくしゃりと崩れる顔が好き。優しい所が好き。私の事を大事にしてくれる所が好き。優しく向けられるその大きな瞳が好き。全部好き。私の名前は「春」。春に産まれたから「春」。子供の頃は、もっと可愛い名前に憧れたりもした。でも空が、言ってくれたんだ。「春の名前は素敵だね。春って新しい出会いも沢山あって、桜も咲くでしょ。一年で一番ワクワクするんだ。春は優しいから、傍に居るだけで、僕の心の中まで暖かい気持ちになるよ。」今まで、そんな事、言われたことが無かったから、空に言われたその一言で自分の名前が好きになった。私は優しい人に入っているのかと考えるけど、自分が他人に…続きを読む
僕は、雲の上から、下の世界を眺めている。事故を起こし、即死だった事を、自称「仏様」とやらに聞いた。それから44日目が過ぎた。雲の上から眺める景色は違う。僕が泣けば、下の世界に大粒の雨に変わり、人々の生活に支障をきたしている事が分かった。今日は、からりとした夜空で、時折吹く風も生暖かい。春の訪れなのだろうか。僕が想像していた仏様とはかけ離れていた姿に唖然とした。仏様のイメージって、後光が差し、渦巻き頭で耳が大きく、優しい笑顔で自分たちを見てくれている・・・そんな感じだった。しかし、全然違うのさ。色んな宗派の仏様が居て、パソコンで共有している。渦巻頭は変わらないけど、仏様の趣味で、ワンピ…続きを読む
スマホのアラームが枕の下から私を呼び起こす。私が起きるまで鳴り止まない。なんて賢い機械なのだろう。私は毛布に包まり、カーテンをそっと開け、空を見やる。空は青く美しい。アラームを止め、ベッドから体を起こし、リビングへ向かう。暖房をつけ、ケトルに水を入れ湯を沸かす。その間にトイレを済ませ、顔を洗い、髪の毛をお団子に結い、入念に手洗いをする。ここまでは機械的にテキパキとやれる。リビングに戻りコーヒーを淹れ椅子に座り、テレビを付ける。一旦スイッチはここで切れます。そうそう、私の自己紹介をいたしますね。私は40歳の専業主婦です。20歳の時に同級生だった主人と結婚し、20年間子育てと家事に追われて来ま…続きを読む