渋谷の待ちを歩く。大きなスクリーンには、話題のシンガーソングライター「三ケ日夏波」のプロモーション映像が流れていた。 「ミッカビナツミ」ふざけた名前だ。 本名「三浦夏波」。キーボードを奏で笑顔で歌う姿は昔から変わらない。僕の大学の同期だ。 二十代を中心に人気を博していたが、ドラマタイアップと共に、その人気は老若男女問わずのものとなった。 スクランブル交差点を渡り、本屋に入る。どこでも買える音楽雑誌を買うためにわざわざ渋谷まで出てくる理由は多分ない。どうしてか今日はこの街に寄りたくなった。 「三ケ日夏波のロングインタビュー」と表紙に書かれた雑誌を購入し店を後にする。 渋谷に寄ったせ…続きを読む
「みんなには内緒だよっ!」妹のツバキは私の白森女子の制服をきて楽しそうに話す。そして、私は妹の潮乃西の制服をきている。事の発端は1週間前だった。立花家の双子の姉妹。私、スミレと妹のツバキ。自室で英語の勉強をしている時、急にドアが開き妹が何か企んだ笑顔で立っていた。「お姉ちゃん、久々に入れ替わりやろうよ?」私と目が合うなりそういった。『入れ替わり』とは、お互いの立ち位置を入れ替える双子特有の遊び。小学校の時によくやっていた。でも、もうそれは無理な歳である。「あんたねえ…そういうのは10年前に終わりなのよ?どうせ学校を入れ替わる!とかいうんでしょ?ダメよ。」私達は別々の…続きを読む