自宅に向かって階段を上がっていた。古いマンションなので、所々蛍光灯も点滅したりする。エレベーターもないマンションに住むデメリットは階段で部屋まで帰らねばならないことだ。歩かねばならない。4階建てだから、仕方ないのか。重い足を引きずり階段を上った。見かけない生き物と遭遇した。屋上に向かう階段の縁に、なんとも可愛いらしい顔が現れた。イタチか?あぁ。「イタチなや」意外と可愛いくて笑いそうになった。ちょっとだけ顔を出しながら、こっちの、様子を伺ってる感じがなんとも愛らしい。わたしは自宅に帰り、あのイタチがどうなったかは知らない。まぁ、無事に郷に帰っ…続きを読む
なぜ僕達は別れなくてはいけなかったのか。お互い一人暮らしだったから、時間が合えばいつでも会える。休日は一緒に出かけどちらかの部屋にもどり一緒にご飯を食べ、一緒にテレビを見て、一緒に寝る。付き合い始めの頃は、その時間が楽しくて、楽しみで仕方なかった。でもいつの頃からか、貴重な休みを自分の時間として過ごしたいと思うようになった。それは彼女も同じでどこかイライラした雰囲気をだす。…ちょっとゆっくりしたいな…たぶん思っていたことは同じだ。一緒にいたい。ゆっくりしたい。そのタイミングがズレたんだろう。好きだと思う気持ちに変わりはなくても、何故かイライラする。僕達は噛み合…続きを読む
康さんは朝、町内を自転車でまわる。十年位前は走ってまわっていたが、膝の具合がわるくなり、自転車でまわることにした。6時に家を出て、大川に向かう。家を出ると、決まって向かいの秀さんと出くわす。「あぁ、おはようございます」「あぁ、おはようございます」いつもこれといった内容はない。いつもの挨拶。6時10分に大川を渡る。橋の中央で川の水位を確認する。ここ20年、大川は危険水域を越えていない。康さんは、軽く頷きまた自転車を漕ぎだす。対岸の商店街に康さんお気に入りの豆腐屋がある。その店で厚揚げを買うのも康さんの日課だ。夕食はその厚揚げをごま油で軽く焼き、生姜醤…続きを読む
夢って捉えどころがない。自分が夢をみていることは分かってながら、今のは夢だ。と思いながらまた次の夢をみている。でまた夢をみていたという夢をみて、目覚めるとほとんど覚えていない。私はそういうことがよくある。でも今日の夢は目が覚めても覚えてる。昨日?昨夜?今朝?の夢は少し違った。もう十年位飼ってる犬のプリン。なかなかかわいい名前だが、雄である。よく吠える仔で家族にしか懐かない。郵便配達員が来ても吠える。近所の人が回覧板を持って来ても吠える。兄が帰って来ても吠える。たまにしか帰って来ない兄とプリンは、再会してだいたい三日目くらいで少し打ち解ける。それでも兄が急に…続きを読む
昨日、一昨日と連休でまた酔って、休んだ覚えがない。わたしの休みはどこへいった。できれば返して欲しい。自業自得だと言われればそれまで。だがわたしとしては休んだ感覚がない。わたしの休みはどこへいった。もう二日酔いとかは感じない。ただ身体かだるく、正常な思考がおこなえない。魂が抜け俯瞰的に自分を眺めているような感じ。おいてけぼりにされた肉体は、これがわたしの実態かと重い身体を残すだけ。そんな状態でしたか、仕事を終え家に帰り着きました。晩御飯をいただき、M TVというのをみていた。KARAOKE20かなんかいう番組をみた。米津玄師の「LEMON」のPVが流れた。わたし…続きを読む
令和という元号になった。私たちの暮らしは豊かになったのであろうか。どこで見かけたのかもあまり記憶にないが、今でもドロップは売られている。ーーーーー「お兄ちゃん。お腹空いた」「そうやな。ドロップでもなめとき」「うん。あっ。赤いやつでた!綺麗やなぁ。やったー。嬉しい。食べんでー…甘い味するで。お兄ちゃんも食べたら」「うん。後で食べるわ。無くなったらもう一個食べや。こんどは何色が出てくるやろな。楽しみやな」「うん。早く次の食べたい」「赤いの美味しいやろ。無くなってからや。ゆっくり食べたらええで。まだあるからな」「うん。お兄ちゃん。でもちょっとお腹空いた。…続きを読む
とある街の繁華街。一つ路地を入れば、飲食店からでたゴミやらが袋に詰められ、狭い通路を埋めんばかりに積み上げられている。ゴミの日がもうけられようが、日々生じるゴミを店舗の内に溜め込むことなどできない。まだ家に帰るには早いなぁ僕は路地裏を歩いた。たまに見かける右足のない犬。その犬を何人かの少年が取り囲み、棒やらでいたぶっていた。「なんでそんなことするん?」「ああ、なんや。俺らの勝手やろ」「かわいそうや」「うるさいわっ」ドンっと左の頭に衝撃を感じて、右によろめいた。痛っと思ったらこんどは腹に蹴りが入ったようだ。後ろに倒れてしまった。「お前ら、なにしとんじゃ…続きを読む
リビングで寝ていた。ーー 今何時だ ーーカーテンの隙間からかすかに届く光が、夜明けを告げている。転がっていた眼鏡を拾い時計を確認すると、針は、12と5の方を向いていた。あぁ、しんど…テーブルの上のコップには、少し液体が残っている。身体を起こしコップの液体を一気に飲む。重い身体を起こしコップに新たな液体を注ぐ為に立ち上がる。ふぅ〜トクトクトクボトルが小気味いい音をたてながら、コップを液体で満たした。フワッとした頭で、フワッとしたまま、紙に書いた。キラキラ光る朝日さえ気がつけばもう別の空山も川も海さえもとどまることなく色づくけれど立ち止…続きを読む
大阪、難波から尼崎行き普通に乗った。電車に乗っているあいだ、物語を読む。読もうと思いながら読めていない作品もたくさんある。申し訳ありません。自宅へ帰るのに、阪神尼崎で乗り換えなければならない。姫路行き直通特急を待っていると、背中。右下くらいの所になにか棒?筒状のものが押しつけられた。「騒ぐな。大声も出すな」わたしは恐怖を感じ身を硬くした。背後から「あんた。プイグだよな」確かにそうだが、なぜそれを知っている?プイグというのはmonogataryでしか使っていない。ということはユーザーか?それにしても面が割れていることなどないはず。冷静になろう。「質問してもい…続きを読む