ニシノナツハです。小説を書くことが実質呼吸代わりの妖怪貧困層。
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アイコン:ノーコピーライトガールさま
クラスメイトの大鐘玄(おおがねげん)は、あたしの家の向かいにある眼鏡屋の息子だ。なお、眼鏡屋の息子だけど眼鏡は掛けていない。 田舎町という狭い箱庭でイキがる、頭の悪い子供の掃きだめみたいな高校で、あたしたちは二年生に進級して初めて言葉を交わしたのだった。 スカートを積極的に折ったり、怒られるか怒られないかのギリギリラインで化粧をしたりするあたしと違って、大鐘は典型的な真面目っ子スタイルで、制服のズボンをパンツが見えるくらいずり下げたりはしない。授業中にスマホをいじったりもしない。そして成績は学年でもベスト3に入る秀才だ。もともとレベルの低い高校だけど、大鐘はそんなのそもそも関係なく、…続きを読む
別にそうしたくてしているわけじゃない。そうしないと、ひとりぼっちになってしまうから。 理由としてはそれだけでよかったし、それしかなかったし、それ以上求めたくもなかった。 スカートの丈は、膝から下まででなく、上までの距離を競う。 髪に隠れる、ちょうどいい場所にピアスの穴をあける。 地毛だと言い張れるギリギリのラインを攻めつつ、髪を染める。 教師にバレない角度とポジションを確保し、授業中にスマホを触る。 これらすべては、あたしが女子として生まれ落ちたがゆえの宿命なのだと言い聞かせる。 もっと言えば、ちゃんとした頭のいい高校に受からなかった自分が背負うべき十字架である、と言っても…続きを読む
「読んだよ。作品」「どうだった」「最後まで夢中に読んじゃったよ。……やっぱあたしには無理だな、なんもないところから何かを生み出すのなんか」 急激に気温がストンと下がった秋の日の、夕暮れの光につつまれていた。歓声とも奇声ともつかない声をあげながら遊んでいたガキ……じゃなかったチビッ子たちがさっき、自転車に乗って公園を出ていった。今はただ静かに、夕陽が遥かかなたに消えていくのを待つばかりだ。 広い公園の敷地の端に、付属品として申し訳程度に置かれているベンチで、ぼくと糸矢莉佐(いとやりさ)は肩を並べて、沈みゆく茜色を眺めていた。いつからか、学校帰りにこうやって莉佐と過ごすのは普通にな…続きを読む
まだ北国でも残暑が幅をきかせていた、長月の夜。 わたしは「それ」が来る3秒くらい前に、ふっと目が覚めた。 いつも就寝時に付けっ放しにしているラジオから、警告音とともに、無機質な自動音声が流れていた。<緊急地震速報です。地震が発生しました。強い揺れに警戒してください。車を運転中の方は、ハザードランプをつけて、周囲に注意して、ゆっくり、スピードを落としてください。屋内にいる方は……> へ? 刹那、地鳴りのような音とともに、揺れが襲ってきた。テレビ台の上の液晶テレビが、ペラッペラの紙みたいに震えている。ここまで大きな地震に遭遇するのは小さい頃以来で、さすがのわたしも…続きを読む
本州の、うまいことやればビール瓶の栓くらいは抜けそうな形をしている場所。そこに、あたしの住んでいる街がある。 青森県むつ市。県内で一番面積が大きい街らしい。だからなんだよ。知らないよ。個人的にはもう少し頑張って、津軽海峡を北側に越えたあたりに着弾したかったよね。出身は函館です、って言ったほうがちょっとカッコよくない? あっちなら、エモい夜景とか、やたらめったらでかいハンバーガーとかもあるし。あとは北海道ってそんなに言葉が訛ってないらしいし、そういう意味でも羨ましい。 ささやかな抵抗として、あたしは普段からできるだけ下北弁でなく、標準語で喋るようにしている。もっとも、その点は学校の同級生も…続きを読む
夜の街に輝くのはネオンの明かりばかりでなく、酒やカネのにおいと、着飾って遊び歩く女たち。 ぼーっとしながら見とれて歩いているとシラフでも電柱に当たりそうなほど美しい、まさに宝石のような女もいたり、幸薄そうな顔をしていてもヘアメイクをすれば化けそうな「原石」、そもそも磨いても磨いても円くなりそうにないただの石ころみたいなのまで、様々だ。 俺の職業は、香水のにおいとオッサンの酒臭さ、そんなものが渦を巻くようにただよう夜の街という鉱山の中で、目利きをしながらホンモノの宝石を探し当てる鑑定士のようなものである。 平たく言えば、スカウト業ともいう。 さすがに「君はダイヤの原石だ」なんて、…続きを読む
特異点目指す貴方が我の夢解説:「全ての人がイノベーターになりたいわけじゃない。 他人に寄り添うことで、満たされる人だっている。 だから俺は、おまえに『夢を持て』とは決して言わない。 その代わり、俺が、おまえの夢になってやる。 西川貴教。 俺が、SINGULARITYだ!」※singularity:特異点出典:TAKANORI NISHIKAWA LIVE TOUR 001「SINGularity」 2019/06/20 @Zepp Tokyo…続きを読む
こんにちは、西野夏葉です。 いつもわたしの作品をお読みいただいているみなさま、ありがとうございます。 初めてわたしの作品をお読みになるという、そこのあなた。 これを読むなら他の作品読んでからでも遅くないです。むしろそうしてください、お願いだから。 たぶんこれ読んでから「お、そしたらこいつの他の作品読んでみるか」とはならないはずなので。 今日は「わたしの一日こんな感じ」というお題でございますので、 もはやほとんどパターン化してしまっている、わたしの日常をご紹介します。 ※今回はわざとめちゃくちゃ戯けた口調で書いているので、あらかじめご了承ください ※時系列…続きを読む
花火、見に行こうよ。 彼のそんな誘いを、内心複雑な気持ちで受け入れた。 いまは彼の隣で、夜に黒く塗り込められた空を見上げている。 そしてもうすぐ、この空が光に満ちる瞬間がやってくる。 彼は純粋に、圧倒的な闇に支配された夜空の中で、たったひとときだけ、最高のかがやきを放って消えてゆく花火のすがたが好きなのだという。つまりは花火大会という、大人も子供もそろって空を見上げながら歓喜の声を挙げるイベント自体が好きなわけではない。もちろん、大っぴらに恋人同士がべたべたできるから花火大会が好きだ……というわけでもない。 彼は純粋に、夜空に満開に咲く火花を見たいだけなのだ。 だか…続きを読む
二人で住んでいた家から一人分の荷物が消えただけで、アパートの部屋の中はこんなにもスカスカになってしまうものなのか……と、吉野祐樹(よしのゆうき)は不思議なほど感心した。最後に残ったのは、一人で使うにはいささか大きすぎる家電や家具と、あとはゴミ捨て場に放り投げてくるだけになったゴミ袋が数袋。法律関係は緑色の紙にサインをするだけでよかった。協議離婚なだけまだマシで、これが調停にもつれ込んだりするとただただ面倒でしかない。友人にも離婚歴があるヤツが何人かいたものの、まさか自分がこんなことになるなんて思っていなかった。祐樹はダイニングテーブルの椅子にもたれ、ため息を一つ漏らす。 つつがなく、人…続きを読む