ニシノナツハです。小説を書くことが実質呼吸代わりの妖怪貧困層。
あーっお客様!!!!ブラウザバックの前にお客様!!!!!よかったら!!!!!拍手だけでもお客様!!!!!!あーっ!!!!
※ご依頼等はTwitterのDMからお気軽にどうぞ
過去の書籍掲載や受賞作品、他サイト投稿へのリンクまとめ→https://lit.link/winterdust
Twitter → @winter_dust_
アイコン:ノーコピーライトガールさま
いつも、何かに追い立てられるように生きている。 もとい、そうなるように自分から仕向けて生きている。 そうしなければ、何もできない、何のとりえもない、何の価値もない人間になってしまうという気がしてならなかった。何もしないで過ごす一日を拒むために、私はそうして生きている。 それなのに、夜になると、いつも同じことを考えてしまっていた。 今日はこれしかできなかった。あれを終わらせられなかった。時には結局(今日、呼吸と飲食以外何もしなかった)という明確な事実を突き付けられ、ナイフの先が自分の喉元を切り裂く3秒前のような気持ちを味わうこともある。 いつの間にか、自分自身を「減点法」で評価す…続きを読む
夜の街を歩くのは、実はあまり好きじゃない。 私はその生態からして、なんならそっちの世界の住人なんじゃ……と思われることは多いけど、実際はそうじゃない。確かに飲み歩くことは多いけど、別に好き好んでそうしているわけじゃないし。特に何もやることもないし、独りぼっちでいることの方がダルいから、街に出るだけ。だから図書館で本のページをめくっているだけで他人が寄ってくるのなら、そうする。お金もかかんないし。でも現実はそうじゃないから、今日も今日とて、私は喉に液体を流し込む。飲んだらユカイになる不思議なお水。けれど法に反するものではないお水。ハタチを迎えたら、ようやくいくら飲んでも怒られないやつを。…続きを読む
こいつ、震えもしなければ、光りもしないじゃん。 薄っぺらなデジタルデバイスをにらみつけながら、あたしは上から顔をうずめているクッションを、さらに横からぎゅっと、手でつぶす。わずかに顔を浮き上がらせようとするので、顎をめりこませる。この行為にはなんの意味もない。これでもし、素手でフライパンを曲げられます……とかそういう特技があれば、今頃あたしだってタワーマンションとまではいかなくてももう少し家賃の高い家に住んでいるはずだ。現実としてはオートロックもない、玄関ドアを開けたら直接外階段に続く廊下に出るような安いアパートにくすぶっている。月収の三分の一近くを、この空間を維持するために費やしている…続きを読む
空というものに対して抱くイメージというのは、必ずしも一つじゃない。 そもそも空のすがたというのも、不変ではない。目がおかしくなったのかと思うほど、真っ青だけの時もあるし、時折そこにちぎれた雲がコラボレーションすることもあれば、今度は重苦しい色の雲に埋め尽くされたり、そこからは雨だったり雪だったりが降ってくることもある。 頭の上に広がる空のことを指して「無限の可能性」とか「自由」とか、そういうことを言う人は結構多いと思う。 けれども僕にとっては、この空こそが人類をこの星に閉じ込めている蓋というか、上から無慈悲にゆっくりと落ちてきて、押し潰そうとしているようにも思えた。:::::…続きを読む
出会いがあるということは別れがある、っていう法則はいったい誰が発見したものなのだろう。 個人的には、別れが必ずしも新しいスタートであるとは限らないし、出会ったあとによほどの何かが起きなければ、たとえ片方がこの世を去ってもそれは別れることにカウントされないんじゃ……とは思うわけだけど、まあ広く一般的な考え方をもってすれば、出会いがあれば別れがあり、別れのあとで誰とも出会わないわけではない……という解釈も、まあ呑み込めなくはない。 じゃあ、今回はどうなんだろうね。 教えていただけませんかね。 神様とやら。 わたしは、自分の胸の中とは裏腹に、なんだか、希望というかエネル…続きを読む
ベッドと呼ぶにはお粗末な、薄っぺらなクッションの上にいる。 知らない男の舌が、身体の上を撫でてゆく。いまさらなんの感情も抱かないけれど、申し訳程度の吐息を漏らしてみせる。それをうけて、相手の興奮が高まっていることを、肌に当たる息の温度で感じ取る。それでもわたしの気持ちはまったくと言っていいほど、相手のほうには揺れることがない。 この仕事を始めた頃、そのうち慣れる……と言われ続けて、確かに慣れたということなのだろう。 さっき自分で暗めにした、天井のダウンライトのぼんやりした光を眺めながら悟る。 がさがさした知らない指が、わたしの身体のなかの、何かを探していた。::::::::…続きを読む
「こんにちは。プロフ拝見しました。もし良ければ、最初はメッセージから仲良くしませんか」「LINEかカカオでやりとりしない?」「いま出張でこっちに来ています。大人の割り切った関係で会えませんか」 この世界って本当にイカれてるよ……と思うと笑えてきて、スマートフォンを鞄に放り込みながら、ふん、と鼻を鳴らす。 そんな中で、あたしは一体、何を求めて生きているんだろうか。 時々、それが、わからなくなる。 実生活で出会いがなく、なんとなく手を出してみたマッチングアプリだった。 プロフィールを登録して掲示板に当たり障りのないことを書き込むと、ピラニアの泳ぐ川に魚の切り身を放…続きを読む
「なんでもないよ」 ほら、来た。 僕はその言葉を見たり聞いたり、まあ歌われることはないにせよ、とにかくそういう言葉をなんらかの形で感じ取ったとき、とてもイヤな気分になる。 ずっと思っているけど、これだって立派な言葉の乱れっていうんじゃないのか。個人的には最近語られるようになって久しい「○○映え」とか「ぴえん」とかいう言葉だって好きではないが、それ以上に「なんでもない」が嫌いだ。ついでに言うなら携帯で写真を撮ることを「写メる」っていうことも好きじゃないけど「なんでもない」はそれを遥かに凌いでいる。 考えてみたら「なんでもない」はずがない。 何かを感じ取った結果、何らか…続きを読む
わずかな睡眠から目覚めると、見慣れた四角い真っ白な天井が見えた。もう何度となく見た景色だ。そもそもが、なかなか天井が真っ黒や真っ青な部屋って見たことないけれど。きれいなお姉さんのいる店とか、お高くとまった美術館くらいじゃない? そんなの。 そういえば、夏の暑い日にエアコンから吹き出してくる風は、よく晴れた日の空と同じような青い色をしているのではないだろうかと思うのだ。本当のところはどうなのか、なんてことは知らない。そもそも石鹸の泡だってわたしたちの目には白く映っているけれど、実際は光の屈折の関係で白く見えているだけなのだというから、本当はラー油みたいな色をしていたとしても、わたしたちがわ…続きを読む
<ごめんなさい> その日、人で溢れる東急線の道玄坂改札で待ち合わせて、いつも通りに合流した留以(るい)は、なぜかぼくがいくら話しかけても、まったく口を開いてくれなかった。最後にデートをした二週間前から今日まで、メッセージのやりとりでは特にいつもと変わることはなかった。それに口を開かない代わりに、すすむ方向へ指をさしてみたり、ぼくがどうにか彼女のうすい唇をこじあけたくて繰り出すくだらない話には、皇后陛下みたいににっこりと微笑んだりして、ぼくの心をかき乱していた。何が気に入らないのか、何に困っているのか、何に喜んでいるのかさっぱりわからない。知らず知らずのうちに、彼女の一番近くにいて一番理解…続きを読む