見知らぬ土地で兵士が死んだ私に翼があったならここでは死ねないここでは死なない見知らぬ空の下で兵士が死んだ私に翼があったならここでは死ねないここでは死なないあの日の大地に向かいあの日の空に向かう変わらないと信じていた私を待つ愛する人たち祖国に血を捧げる兵士だとしても祖国に身を捧げた兵士だとしても兵士であっても兵士でなくても私に翼があったならここでは死ねないここでは死なないあの日の大地と空の色変わらないと信じていた愛する人たちにあの日々に私に翼があったなら見知らぬ土地で私が死んだ見知らぬ空の下で私が死んだ…続きを読む
顔を上げた何処から聞こえる音(声)を拾おうとまわりを見渡すあたりはあい変わらず暗いそれでも音(声)の出処を探すこの心の底から湧いてくる感情はなんだろう?はじめて聴く(聞く)音(声)のはずなのに懐かしいような感覚この音(声)をこの音(声)を探していたそんなバカげた事を思う自分が可笑しいこの音(声)にこの音(声)に会いたい逢いたい音(声)を頼りに暗闇を抜け出して抜け出した先にたくさんの音(声)が溢れていたあぁ世界はこんなにも明るくたくさんの音(声)があったのだ君に会いたいあの音(声)に逢いたい混沌複雑魅惑…続きを読む
○街(夜) 街並みにイルミネーションが輝いている。腕をくみ歩く若い男女。子供を間に手を繋ぐ親子。同性で密かに手を繋ぐ(男でも女でも)二人。男、女の数人のグループ。皆、それぞれ笑顔がこぼれている。○ビルの屋上(夜) 柵に身を乗りだし眼下にひろがるイルミネーションを見下ろしている幸子(32)その顔色は青白く、腫れ目の下にクマが出来ている。屋上に吹く風に幸子の髪が乱れる。幸子、柵を握りしめてよじ登る。椿「何しているの?」 幸子、驚いて後ろを振り向く。長い黒髪をひとつにまとめた椿(28)が立っていた。白い肌に映える切れ長の目は睨みつけるように幸子を見ている。幸子「来ないで!」…続きを読む
○シブヤのある街角 仮名タロウ(見た目少年)が空を見上げてて立っている。そこへ制服の警官A(25)と警官B(41)がやってくる。警官A「君、昨日からそこにずっと立っているけれど、どうした?」 仮名タロウ、空を見上げたまま、仮名タロウ「大丈夫です」警官A「大丈夫とかじゃなくて、何をしているんだ?」仮名タロウ「迎えが来るのを待っています」警官A「迎え?」 警官A、警官B、空を見上げる。警官B「空から迎えが来るのかい?」仮名タロウ「はい」 警官A、渋い顔。警官B「空から?」仮名タロウ「はい」警官B「で、いつ来る?」仮名タロウ「地球時間で言うと、三年後です」警官A「は…続きを読む
扉が開いたのでその奥へと進んだ。 ここはどこだろう?と、その場で立ち止まったていたら、後ろから押されてよろめく。押した相手はアリスに気づくことなく足早に歩いていった。自分が出できた扉は閉められて、合図のベルが鳴ると動きだした。乗っていたものが電車であるとわかった。「あいかわらず、ちんぷんかんぷん」 アリスは独り言を言う。いつ自分が電車に乗っていたのかもわからないのに降りたところが駅のホーム。「そうよね。電車に乗っていたのだから駅よね」 自分を納得させる意味でもアリスは呟いた。たぶん、出口はあっち。アリスと同じように扉から出できた人物たちが向かっているところ。その後を追い…続きを読む
キレイになった風呂場で俺は満足気に、腰に手をあてた。今日はネットで見付けた新しいブラシと、環境に優しいと話題になっている洗剤で試してみたのだか、思った以上にキレイになった。写真でも撮ろうかと思ったが、SNSにあげる趣味もないし、あげたところで妻の批判を浴びることになるだろうと想像もできたのでやめた。 風呂掃除が好きになったきっかけがあった。大学時代のバイト先で、俺はいつもならしない失敗をした。失敗は俺がしたのだから怒られるのは仕方がない事なのだが、間が悪い事にその日はバイト先の嫌味な先輩と同じシフトであった。嫌味な先輩はここぞとばかりに俺を怒った。ネチネチと同じ言葉を何度も何度も…続きを読む
いつもの帰りの車両の中、私の隣にはいつも間に当たり前のように琥珀がいる。学校は同じだけれど学年が違う。以前から面識があったわけでもないと思う。たまたま帰りの電車が同じで降りる駅が一緒。ただ、それだけだと思う。琥珀は私を朱音と呼びすてにする。だから、私も琥珀と呼び捨てにしている。琥珀の前では、年上とか年下とか、男とか、女とか、そうゆう考えをしなくても良かった。そう思っていたのだけれど…。 今日、クラスメートの一人が、私と琥珀の関係を聞いてきた。帰りの電車内で話をしている私と琥珀を見たという事だった。私が答えられずにいると、なんだか睨まれているような居たたまれない気持ちになった。…続きを読む
向かいのガラスに自分の顔が映っていた。地下鉄って外が見えないから、今が昼間なのか夜なのかわからなくなる。と、ぼんやりと思う。ほぼ車が交通手段の、鉄道が走る町からも離れた田舎に暮らしている私にとっては、電車は都会の乗り物だ。ましてや、地下鉄など、The都会イズ乗り物である。ここにたどり着く道のりも、田舎では考えられない多い人の流れに惑わされないように、何度も調べて覚えた路線と番号を間違わないようにと、祈るように切符を握りしめてたどり着いた。時間帯が良かったのか、座れて正直ほっとしている。自分の降りる駅はまだ先にある。目を閉じると心地良い揺れと音に、安心感を覚えた。日本の電車は時間通り…続きを読む
対向車のライトが眩しい。視線の向こうにいつの間にか月が昇っていた。いや、最初から昇っていたのに、気づかなかっただけだろか?日が沈み辺りが暗くなったことで、月の存在に気づいたそんなところだろう。助手席のソファに深々と座る娘はスマホに夢中で、隣にいる俺など眼中にないというより存在を忘れている。そんな感じが見て取れて、難しい年頃になった娘の父親としては、悲しいやら寂しいやらの感情が溢れ出てくる。塾帰りのお迎え。いつもは母親がしている事が俺にまわってきて、久しぶりの娘とのデートと、朝から密かにはしゃいていた俺の心に、車の外と同じ秋の冷たい風が吹いていた。『おーい、君の父さんは隣にいるんだぞ…続きを読む
ここの学食は評価が高い。安くて量もあって、しかも美味しい。評判は通う学生だけでなく、近くの住人たちにも知れていた。そんな学食で俺が一番好きなのはハンバーグ。つなぎに長芋が入っているらしい。ここで初めて食べた時から大好物になった。しかし、今はその大好物のハンバーグの上で俺はため息をはく。「食べないのか?」 俺の前の席に座っていた真鍋が、心なしか睨みながら言ってきた。俺は箸はつけたものの口に運ぶ事をやめていたハンバーグに目を落とす。曖昧に頷いて箸をもう一度つけたが、大きな息が漏れて、やはり食べられない。「食べないなら貰うけど」 真鍋の前にある皿はキレイに空になっていて、俺の了解…続きを読む